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side副会長




たとえ何とも思っていない相手であっても手を出すことなんて簡単にできる。

実際俺だってそういう経験は何度かしてきた。それなのに…。

どうして手が出せない?久遠に大嫌いと言われたくらいでどうしてこんなにもイラつく?

あいつに何かしようとする度、よぎるのは最後にみたあの子の顔。

無意識に久遠と遥を重ねてしまっている…?いや、そんなはずない。

それとも…三年間も会えないうちに、俺の中でのあの子の存在が薄れてきてしまったとか…?

そんな考えがふと頭に浮かんで急に怖くなった。











笑顔なんて表面上だけのもの。そこに気持ちがあろうとなかろうと関係ない。笑っていた方が世間からの受けがいいからそうしているだけ。

敬語で話すことだってそうだ。その方が他人と適度の距離を保つことができる。

馴れ合いだなんて面倒くさい。

中等部に入って間もない頃。そんな考えを涼夜に話した時、冷めてるって笑われたことがある。

「冷めてるのではなくて事なかれ主義なだけですよ。実際その方が上手くいくことは多いでしょう?」

揉め事が起きる事もないし。俺がそう続ければ涼夜は笑うのをやめ微妙な顔をした。

「ふーん。ならお前、俺に対してもそういう風に思ってるわけ?」

涼夜に対しても…。その時は何でそんなことを聞くのだろうと思った記憶がある。

「まぁ揉め事を避けたいという意味では同じかもしれませんね。例えば何か頼み事をされたとして、表面上だけだとしても一応それに応えようとする姿勢は見せるでしょうし…。」

「おい。普通本人に言うかそれ。」

「冗談ですよ。」

とは言ったけど…。あながち全部が全部冗談ってわけでもない。

確かに期待には応えようとすると思う。だけどそれは友情だとか、そんな美しいものじゃなくて。

ただ自分が困った時のために相手に恩を売っておくに越したことはないから。もちろんそこまで涼夜に伝えることはしなかったけど。

さすがにそんなこと言われたらいくら幼馴染だって見る目が変わると思う。

人に本心を見せるのが怖いと思うようになったのはいつからだろう…。




好きだと言われれば相手を出来るだけ傷付けないように断るし、時には付き合ったりもしてきた。

だから最初は本当にただの気まぐれだった。あの子と付き合うことにしたのも。

二年に進級したばかりの頃。初めてあの子に会ったのは、俺が偶然告白の現場に立ち会わせてしまったことが原因だった。

「あ、あの俺と付き合えよ!その…絶対大事にするし!」

そんな声が聞こえて興味本位に覗いてみればそこに居たのはガタイがいいのとちっこい生徒。

そこは普段は滅多に人が来ない自分にとってお気に入りの場所で。…どうでもいいけどさっさと終わらしてくれないかな。そんな程度にしか思っていなかったと思う。

「あんた、前俺のこと女男とか言ってきたやつじゃん!」

気付けば男の告白に対しちっこい生徒の方がそう声をあげていた。

…あれ、なんか予想外かも。てっきり告白の返事してカップル成立するのかと思ったのに。

「それは…俺も子供だったんだよ。だってあん時は恋愛とかするような年でもないだろ?!だいたいお前が女顔なのは事実…」

「はいさよーなら。」

聞いてて思わずプッと吹き出してしまった。なにあれコント?

あの子ああ見えて結構サバサバしてるんだ。

「あーもうっ!俺だってお前なんかなぁ!顔以外どっこも好きじゃねぇよ!もういっそその身体だけでも…」

あ、なんか面倒くさくなりそうな流れ。あの子には悪いけど助ける義理もないし。気付かれる前にさっさと立ち去ってしまおうと思ったわけなんだけど…。

デカイ方と偶然目が合っちゃったんだよね。

あー…最悪。



「そこで何してるんです?」

にこにこと笑顔を貼り付けて出て行けば小さい方の生徒が驚いた様子でこちらを向いた。

…なるほどね。確かに男受けしそうな顔ではある。

「無理強いはよくありませんね。彼、困っているみたいですよ?」

嫌々出てきたことを悟らせないようはっきりとした口調でそう続ければ、相手の生徒はにやにやと嫌な笑みを浮かべた。

あーこいつの考えてることが手に取るようにわかる。俺のこと弱そうだと思ってなめてるわけね。ぶち殺してあげようかな。

「ん?誰かと思えば東堂の幼馴染さんじゃねぇの。前からあいつのことは気に入らなかったし見た目も…なかなかいいな。」

…あわよくば二人まとめて襲ってやろうって?あいにく男に抱かれる趣味はない。

これはちょっと痛い目合わせてあげる必要があるかもしれない。

「あ!東堂先輩こっちです!!」

相手がこちらに詰め寄ってこようとした時、突然そう言ったのは黙って俺達の様子を見ていた小さな生徒だった。

同時にグイッと強い力で腕を引っ張られる。

東堂って…涼夜のことだよね?そんなタイミング良く現れるわけないでしょ。そんな嘘誰も信じな…

「東堂がどこに居るってい…あ!おいてめーら待ちやがれ!!」

嘘。騙された馬鹿が居たよ。

俺の腕を引っ張る生徒が振り返りしてやったりと言いたげな表情でにやりと笑ったのが見えてなんだかおかしかった。


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