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会長達がそんな風に話をしている頃。生徒会室を出た俺は風紀室へは向かわず別の場所へと向かっていた。

長い廊下を抜け裏庭を抜けたさらに奥。美しい花々に囲まれたその場所はこの学園の生徒のなかでも知っている者は少ない。

やっぱり…。ベンチに座るその人の後ろ姿を確認し俺は声をかけた。

「副会長、どういうつもりですか?」

探していた人物はすぐに見つかった。見渡す限り他に先客は居ない。一人読書をしていたらしい副会長は意外そうな表情で俺を振り返った。

「突然なんです?まさか…ここまでつけてきたんですか?」

副会長がよくこの場所へ来ていることは知っていた。付き合って居た時にはよくここで会ったりもしてたし。俺達の思い出の場所。もしかしてと思って来てみたけどまさか本当に居るなんてね。

それにしても…わざととぼけているのかな。あんな風にテープレコーダーを持ってきたのも俺の正体が分かっててやったことじゃないの?

じーと相手を見つめれば副会長はイラついた様子で眉を寄せた。

「……何見てんの?疲れてるから今は君の相手したくないんだけど。」

敬語が崩れて現れた本性。面倒そうにそう言ったその顔は確かに疲れているように見えた。

……?

バレてるわけではない…?だったらあのテープレコーダーを持ってきた意味は?

だいたい仕事もしないで責任全部会長に押し付けといて疲れてるなんてよく言う。まぁ会長がセフレを連れ込んでるだなんて噂、ほとんどの生徒が信じてないだろうけど。

「俺だって好き好んであんたと話してるわけじゃない。本当なら顔すら見たくないくらいなのに。」

俺は今の正直な気持ちを相手にぶつけた。別にいい。下手に演技したってどうせバレるんだから。

すると副会長がぴくりと眉を動かしたのがわかった。

「…そこまで言う?」

声が若干低くなったことから相手の苛立ちが伝わってくる。だけどそんなのこわくもなんともない。

むしろ相手が今まで余裕かましてた相手なだけにこういう姿を見るのは楽しいかもしれない。

惚れさせるのが目的なのに自分が今全く逆方向のことをしていることは頭では分かってた。

だけどどうにかしてこの人を傷付けてやりたいなんて思ったりして。

無計画で自分らしくないけど。俺は真っ直ぐに副会長を見つめて言った。

「俺はあんたみたいなのが大嫌いなんです。平気な顔して誰かを傷付ける。何考えてるのか知らないけど人の反応見て楽しむような真似は二度としないで下さい。」

俺なんかにこんなこと言われたってこの人にとってはどうってことないかもしれない。

だけど少しでもその心をダメージを与えられたなら。

とりあえず言いたいことは言ったのでその場から立ち去ろうとすれば何故か後ろから腕を掴まれた。

予想外の行動に驚いて振り返れば副会長が無表情に俺を見ていて。

「君に何がわかるの。」

だんだんと近付いてくるその顔に思わず息を飲んだ。それはほんの数秒の出来事。

すぐに相手はハッとした様子で俺から離れた。

キス…されるのかと思った。そんなことありえるわけないのに。今のはなんだったんだろう。




「………本当嫌になる。」

吐き捨てるようにそう呟いた副会長の声が聞こえた。

こちらをちらりと一瞥した後やはり苛立った様子で副会長は俺から背を向けた。

やっぱり今日のこの人はなんかおかしい。


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