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「これ相川君の声ですよね。想像してしまったら少し気分が…。」

俺の言葉を聞いて会計は納得したようにあーと頷いた。

「確かに知り合いの喘ぎ声なんて出来ることなら一生聞きたくないものだよね。それが好きな相手なら話はまた別なのかもしれないけどさ…」

ちらっと期待したような目でこっちを見るのはやめてほしい。まぁ納得してくれたなら良かったけど。

「でも結構衝撃的だったなー。まさか柚希と委員長に身体の関係があったなんて。」

「そんなことより問題なのは内容の方だ。あの会話からすると身体と引き換えに風宮を思うように動かしてたってことだろ。」

最悪だな。会長はそう言ってため息を吐いた。確かにテープレコーダーの内容からして相川が身体を使って委員長に取り入ってるような感じだった。

でも相川の言っていた消すってどういう意味なんだろう。あの子達の身に何かが起こった…?

「副会長が何でこんなもん持ってたのかも気になるよねー。もし仮に前から持ってたんだとしたら何で今更出してきたの?って感じだし。」

会計の言ってることも確かにそうだと思う。副会長は何を思ってこのテープレコーダーをここへと持ってきたんだろう。

わからないことが多すぎる。この状況がひどくもどかしい。

「…さっき出てきた名前は全員遥の親衛隊だった生徒のものだ。」

そう言ったのは会長だった。彼の口から遥という名前が出てきて少しどきっとした。会長が言っている遥が今の俺のことじゃないってことはわかるけど。

「会長ってば久遠の親衛隊はまだ正式に結成されてすらないでしょー。あ、そういえば隊長が柴咲剣になるかもって話本当?」

今話してるのが俺の親衛隊についてじゃないことなんて分かってるくせに。話題を変えたいのか、明るい調子で会計は俺の肩に手を置いた。会長も一瞬目を細めたけど特に咎めることはしない。

俺が椎名遥本人なんだけどね。知ったらどうするんだろう。騙してたことを恨むかな。それが原因で人間不信になんてなったりなんてしないよね。

自分がどうなることを望んでいるのか最近はわからなくなってきた。

「…とりあえずあんな変態は御免ですね。」

話に乗って俺がそう答えてやれば会計はギョッとしたような顔をした。

「へ、変態?!まさか久遠…何かされたんじゃ…っ」

「お前がそこまで言うなんて珍しいな。」

会長までまじまじとこっちを見つめてきて少し困る。てか二人とも食いつきすぎでしょ。

「俺だってあんまり人のこと悪くは言いたくないですけどね。」

柴咲は特別無理なんだから仕方ない。あいつが親衛隊の隊長にでもなったらそれこそ顔を合わせる機会だって増えるだろうし。

「まぁ合う合わないはあるもんな。…ところで久遠、急に悪いんだがこの書類風紀に持ってってくれないか?いろいろあって完全に忘れてたが期限今日までなんだよ。」

そう言って会長が手渡してきた書類は…特に提出期限は書かれていなかった。

これはひょっとして席はずせってことかな。

「わかりました。じゃあ今日は俺そのまま帰りますね。」

戻ってこないから安心して話すればいいよ。にこっと微笑めば会長は苦虫を噛み潰したような顔をした。

…ちょっと意地が悪かったかな。












side会長


多分提出期限なんてものが嘘だってことにも本当は気付いているんだろう。それでもそれを咎めるでもなく素直に従うその姿勢に多少の罪悪感が起こる。

「あーあ久遠行っちゃった。俺も今日はそろそろ帰ろっかなー。」

会計はというとそう言ったものの動こうとはしない。なんやかんやでテープレコーダーのことが気になってるんだろう。

「…久遠の前で遥の話はしたくないのか?」

これこそが久遠に席を外してもらった理由だ。こいつは明らかに久遠に遥のことを知られないように話を逸らした。

「そんなのあたりまえじゃん。知られたらきっと引かれる。」

そう言った会計の顔から読み取れるのは後悔の念。まぁこいつが以前遥にしたことを考えると隠そうとするのは当然か。俺だって完全に許しきれたわけじゃない。

「…遥の親衛隊は何で解散したんだろうな。」

そう問えば会計はハッとした顔をした。

「…そういえばそれさ、生徒会が潰したんだっていう噂流れてたよね。実際は本人達から言い出したことなのに。」

不審な点は多かった。遥の親衛隊が解散した時、その噂はどこからともなく広がり何故か生徒会が潰したのだという内容だったはず。

「…このテープレコーダーの内容からして風宮が関わってた可能性が高いな。調べてみる必要がありそうだ。」

俺がそう言えば会計も深妙な表情で頷いた。

「……俺さ、本当は柚希がここに来る前から遥っちのこと嫌いだった。だけど…」

ふっと会計の顔に影が差す。

「反省してる。ただの八つ当たりでしかなかったってやっと気付いたよ。もしまた会えるならちゃんと謝りたい。」

少し前までのこいつなら考えられない言葉だ。

「…それは俺も同じ気持ちだ。きっと必ず会える。」




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