『まいほーむ』
□三食目
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『手』
「終わったよ」
男は私の腕から手を離し、私の体に巻かれた真新しい包帯を見て満足そうに笑顔を浮かべた。
腕の傷は深いものが少なかったからか既に塞がっていたのを少し驚かれた事意外は特に問題はなかった…はずだ。
「よし…。じゃあ、そろそろ話をしようか」
「やっとか…」
椅子をべっどに寄せて座った男はやっと私が待ち続けていた本題を持ち出してきた。
私もべっどに胡座をかき、話す体制に入る。
「まず、何から聞きたいんだい?」
先程とは違い真剣な表情をする男を前に、私は口を開いた。
―
口をだらしなく開け、見開いた目でボクではなく別のどこかを見つめていた。
品がないな…、なんて冷静を装ってその様を分析しても、さっきの話に意識が行ってしまう。
質問に答え、さらにその答えに質問が被さる。
それを繰り返せば繰り返すほどお互いに疑問ばかりが積もっていた。
そして最後の質問、それがボクにとっての答えで、ボクの質問が彼女への答えになった。
しばらくして、彼女の顔が歪む。
「大丈夫かい…?」
「…大丈夫…だと思う…。薄々、気づいちゃいたんだ…。あまりに馬鹿馬鹿しくて、自分の中で否定して、それだけはないって思い込もうとして…」
段々歪んでいく表情に耐えきれなくて声をかければ、困ったように眉を下げこっちを見た彼女と目が合った。
震えた声に泣くのではと思ったがか、困惑した目から涙は流れず、代わりに強く目を閉じ深いため息が聞こえた。
目をそらす事のできない事実に抗うように閉じられた瞳に目覚めない彼女の姿を思い出し、見ていられなくなる。
「…君が信じたくなくても、ボクが信じる。ボクには君が嘘を言っていないとわかる、ボクは君が別の世界から来たという事を信じる、だから、目を背けないで」
ピクリと小さな肩を震わせ、固く閉じれた瞳を開けた彼女は、やっぱり泣きそうな目をしていた。
―
耳を塞ぎたくなるような声に、言葉に、目を開けた。
目の前には私を強い眼差しで見る男。
「なんで…?会って数日、話して二日…。それだけなのに、なんで…」
二回目。
昨日も同じ質問をした。
でも今回は意味が違う。
困っている人間に手を差し伸べるのと知らない人間を信じるのは、違う。
「なあ…、何でだ…?」
何も言わない男に問う。
きっとこの男は嘘を言っていなかった。
だからこそその理由が知りたい。
昨日今日話しただけの人間を…いや、人間とすら言えない私を信じれた理由を。
私にはできなかった事だから…。
表情を変えず私を見る男は、ついにその口を開いた。
「君に好かれたいと思ったから、かな」
そう言って照れたように頬をかいた男は、私に手を伸ばした。
それに私が首を傾げれば、無理矢理私の手を握る。
「これからよろしく、雪裏ちゃん」
「…よろしく、ココ」
初めて触れたココの手はとても暖かかった。
「…ちゃん付けやめてくれない?」
「嫌だ」
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