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□prologue
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カトレア・ソーンは特別な子供だった。

6歳の時に純血の名家ソーン家に養女として迎えられ、愛情をたっぷり注がれながら立派な教育と礼儀作法を学んだ。
11歳になってホグワーツへ入学すると彼女はたちまち自分の才能を開花させた。
1年生には難しいとされた複雑な魔法をなんとなく杖を一振りするだけで成功させたし、座学もノートを取らずにその場で暗記することができた。
教授たちはこぞってカトレアを「天才」だと評価したが、生徒たちからは疎まれる存在になった。彼女がスリザリン生だということも、悪印象を与えた。

もちろん同寮生たちは彼女を高く評価した。
結束力を大事にするスリザリン生にとって仲間を擁護するのは当然のことなのだ。相手が才能ある魔女なら尚更だった。

しかしながらここでもカトレアの特異さが発揮された。
彼女は友人を作らず、一人で行動するのを好んだのだ。
そして純血の名家出身、スリザリン生という出自ながらも驚くべきことに、カトレア・ソーンは純血主義者ではなかった。

その事実を知ったスリザリン生は驚愕し、彼女に対してどのような対応を取るべきか決めかね頭を抱えてしまった。
そんな彼らの苦悩をどこ吹く風とばかりにカトレアはホグワーツで1、2位を争う物静かな優等生としての地位を着実に確立していった。

そして学年が上がる度に、彼女は周りから注目される存在になっていた。
元々入学当初から美人だと言われていたが、彼女の才能と同じようにその美しさは成長を続け、スリザリン生だけでなく他寮の生徒たちからも熱い視線を受ける程だった。
しかし、彼女が目が覚めるような美人だったからというのは要因の一つに過ぎない。

カトレアには、人を惹き付ける才能があった。

それはあの「生き残った男の子」、ハリー・ポッターと同様のものだ。
彼の持ち前の行動力や勇気は彼の友人たちにも伝染する。だからこそ、いつも周りはトラブルに巻き込まれてしまうのだ、とカトレアは傷だらけで大広間にやって来る彼らを見る度考えていた。

もちろん彼女はハリー・ポッターを知っていたが、彼が彼女を知っているのかどうかは分からなかった。
カトレアは彼女の幼馴染みのようにポッターに突っかかることはなかったし、目立つようなことはしなかったから。
それに、彼女はポッターを極力避けていた。
好きなことより嫌いなことが多い彼女は何よりも面倒なことに巻き込まれることが嫌いだったのだ。
カトレアからしてみれば、彼は歩くトラブルメイカーのようなもので、一度話しただけでも人生を狂わされるような気がした。

ハリー・ポッターと一度も関わることなく無事に卒業するのが彼女の望みだった。

―――しかしその願いはあっけなく打ち砕かれた。

こうなるのはずっと昔から決まっていたが、カトレアにとってはアルバス・ダンブルドアが戸口に現れたあの夜が後に起こる出来事の始まりだった。

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