メタルファイト

□存在
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氷魔の事が、俺は嫌いだ。あいつは、銀河の色々な表情を知ってるから。俺が知らない銀河を。何故、知っているんだ。俺の知らない銀河を。よりによって、何でお前何だ。
だから氷魔が嫌いだ。

今日も、奴は涼しい顔して銀河の傍に居た。苛々する。何で、そこに居るのは俺じゃないんだ。銀河も、何でそんなに嬉しそうな顔をするんだ。くそっ。俺は苛々した気持ちのまま、この場を離れた。

俺の後について来るベンケイは、俺が何故この場から離れた事に気付いておらず、オロオロしていた。今の俺には、それさえ腹立たしい。けど怒りの矛先をベンケイにぶつけるのは理不尽な話だ。だから俺は、ぐっと堪えた。そして、ベンケイに聞いてみた。
「なぁベンケイ。……お前、氷魔の事、どう思う?」
「え?………気に入らない奴っすかね」
「だよな」
新参者は、嫌い。それは誰だって感じる事だろう。そう、ずっと居た者からしたら、余計に。
「キョウヤさん…。あの氷魔って野郎、なんなんでしょうね」
「……ただの邪魔者だ」
そう。俺にとっては一番の障害だ。邪魔で。けど銀河の知り合いだから何も出来なくて。それがとても惨めに思えた。


だから俺は氷魔を呼び出した。
そして、その事を告げたら、奴は……。
「それなら、あなたをずっと見て行きます」
とか言いやがった。流石にそれには焦ったし、訳分からなくて。けど、銀河にもう近付かないんならそれで良いかと、俺は思ってしまった。
それが間違いだった。


いつの間にか、俺と氷魔は、付き合っていた。恋人って言う仲でも無かったが。とにかく、キスしたり、身体を重ねたりしていた。

何やってんだ、俺は。


良く氷魔は俺に向かって、

「愛していますよ、キョウヤ」

とか言って来ていたが、俺はそれに答えた事は無かった。答えたくなかった。そこで答えたら、銀河にはもう二度と会えないと感じ取れたから。
そして、またキスを交わす。これが銀河だったらどれだけいい事だろうとか、思ってしまっていた。
多分、俺の初恋が銀河何だろうな。あの時……初めて出会った時は、ただ俺より強い相手が現れたから、楽しくて。けどそれがいつの間にか恋ってもんに発展してて。自分でも気付かなかったし、気付きたくなかった。相手はあの銀河だ。人気者で、誰からも好かれる銀河。だから、距離が遠く思えてしまって。俺と銀河の距離がどんどん離れて行った感覚に襲われた。

その時に、氷魔に、別れろとか言えば良かったのに。愛されるぬくもりを知ってしまった俺は、その沼から抜け出せずにいた。
氷魔に抱かれる度に気付かされるのだが、それが終わった後、氷魔が、俺を大事そうに抱き締めるから、言えなくなっていた。俺を騙してるかと思ったが、そうではないようだ。演技で、あそこまで出来ないだろう。出来たら大したもんだ。

氷魔は、俺を呼んだ。
俺も氷魔を呼んだ。
互いに求め合った。


それが銀河に知れた時は、絶望した。変に勘違いした銀河は、俺に向かって、幸せにな。とか言って。泣き出しそうになった。

俺が好きなのはお前なのに。

何でだよ。何で、そうなっちまうんだよ。銀河……。俺は氷魔を呼び出した。

「ふざけんな」
その一言と一緒に、殴った。思いっきりではないけれど。けど、とにかく殴った。
「………そんなに銀河に知られたくなかったですか?」
「当たり前だ」
「それはすみません」
それで、終わりかよ。ふざけんな。
「お前のせいで……」
「けど別れようって言わなかったあなたが悪いんじゃないんですか?」
「っ………」
確かにそうだ。あの時、別れようって言えてればこんな事には……。俺は氷魔にすがり付いた。
「…………なぁ、俺、どうしたら良い」
「……素直に僕の事を好きになれば良いんだと思いますよ」
素直に……。
氷魔に抱き着いてしまった。あぁ、くそ。涙が出そうだ。何で……こんな思いをしなきゃならねぇんだ。辛すぎる。銀河には、変に知れてしまって。氷魔は俺を求めて。
俺は、どうしたら良いんだよ。
教えてくれよ、銀河……。






END

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