爆転

□最強を望む者
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それから随分歩いていた。
「(どういう事だ。・・・・修道院の下に、ベイの研究施設とは・・・。そして、この胸騒ぎは一体・・・)レイ、俺から離れるな」
「うん・・・」
カイの手をぎゅっと握り締めるレイ。そのカイの手は、とても冷たかった。
それからもう少し奥に進むと、一つの扉があった。その扉は少し開いていたので、覗き込んでみた。
「なっ・・・!何だ、これは・・・・!」
「カイ・・・?・・・・なっ!!」
二人が目にしたもの、それは何かに漬けられている動物達の姿だった。そして、その一つの動物の下では、男二人が、ベイに向かって、何かをしていた。
「これは・・・・・、まさか、聖獣のビットの研究なのか?」
「嘘、だろ・・・?」
レイは一歩引いていた。それに対し、カイはここから離れなければならないと思った。だが、奥の方から悲鳴が聞こえてきた。
「!?・・・・レイ、絶対に離れるな」
カイはレイの手をぎゅっと握った。そして奥の方へと向かう。


ベイのぶつかり合う激しい音がしたと思ったら、次にはまた悲鳴が聞こえた。ゆっくりとそこへと近付いて行く。
「(あの叫び声・・・、悲痛の叫び声・・・・。そう、俺は・・・・)・・・・っ!レイ、俺の後ろに居ろ」
この光景を、レイには見せたくない。だからカイはレイを後ろに居させた。
「カイ・・・・」
あの悲鳴が何なのか、勿論真相を知りたいが、カイの命令は絶対だ。
そこでは、惨い光景が繰り返されていた。その光景が、カイの忌まわしい記憶を徐々に蘇って行った。
「カイ・・・・?」
「レイ・・・・」
カイの瞳は、虚ろになりかけていた。
「ここから離れよう・・・」
レイを連れ、ゆっくりとその場から逃げるように立ち去るカイ。
そして、壁に居背中を付いた。
「(そうだ、思い出した・・・・。胸騒ぎの正体が分かった・・・。ここは、かつて俺が・・・)」
「カイ・・・・」
呼吸が荒いカイを、レイはただ見守る事しか出来なかった。その時だ。突然何処からともなく泣き声が聞こえた。カイがちらっと下を見てみると、牢屋があり、中にはあの時、タカオに負けたザンゲフが居たのだ。ザンゲフはカイの顔を見るや否や、カイに近寄ってきた。
「助けて・・・・助けてください!お願いですから助けて!」
「はっ・・・・!」
それを見たカイが、突然震えだした。
「カイ!?」
「助けてください・・・・!」
カイに手を伸ばすザンゲフ。カイがそこから離れようとした時だった。
「いった!!」
「っレイ!・・・・・!!お前は!!」
レイの腕を捕まえていたのは、あいつだった。
「久しぶりだね〜、カイ君。・・・・どうやら全て思い出したようじゃないか」
「カイ・・・・?」
「あっ・・・・あ・・・・」
ボルコフの顔を見て硬直しているカイ。するとボルコフは帽子を取り、何かを目につけた。
「そう、私だよ」
その目につけたやつを見るとカイは、倒れて行った。
「カイ!!」
「俺は・・・・・・、俺はかつて・・・ここにいた・・・・!」
「え、嘘だろ?・・・・・なあ、何とか言えよ、カイ!!」
「・・・・・そうだよ、火渡カイ君。君はかつてここで育ったんだ。・・・・良く帰ってきた。さあ来てくれたまえ、私と共に!」
そうは言っているものの、レイを離そうとしない。レイは必死にもがいたが、ボルコフは大人だ。適う筈もない。
「私にはね、君の力が是非とも必要なんだよ。・・・・・・さあ、カイ君」
片手でカイの頬に触れようとした。だがそれをカイが払う。
「断る。・・・・・レイを離せ」
「カイ君・・・・」
「確かにここには見覚えがある。そしてお前の顔にもな!・・・・・だが、ここでの事を、はっきり思い出した訳じゃない!」
「何だと?」
「それにお前の言う事が本当だとしても、お前と共に行く気はない。分かったなら、レイを離せ」
「・・・・残念だ・・・、紳士的に行きたかったのに・・・」
だがボルコフは、レイを離そうとはしなかった。それどころか強くレイの腕を握って来た。
「いった・・・・!!」
「貴様!!」
「ふふ、大事なお友達のようだね・・・」
「当たり前だ!レイは俺の、大切な・・・・」
「そうか、なら・・・・・」
突然の煙幕。カイの視界からレイとボルコフの姿が消えた。
「貴様!!!」
「返して欲しくば、あの場所にくるんだ!君なら分かる筈だ!」
煙幕が消えると、レイもボルコフも居なかった。。あの場所とは、何処だ・・・・?カイは取り敢えず走り出した。
「あの場所・・・・」
思い当たる場所。一つだけ心に引っ掛かった。
「・・・・・・まさか・・・」
走りながら、心の迷路を一つ一つゴールへと向かわせていた。
「レイ、すまない。・・・・待っててくれ!今助け出すから」
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