星屑ひろいの少年2

□聖なる暗室
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悠太は、意識を失うことと眠ることの違いがよく分からない。
悠太は、小学校の時、一度だけ意識を失ったことがある。
 幼い悠太は身体が弱く、よく貧血を起こして倒れた。
 小学校の時、いつもと何ら変わりなく登校した悠太は、冬の朝ジョギングをやらされるため、校庭に並ばされて、いつものように三分間の校長のスピーチを聞かされた。校長の話が、本日の気候から三日前に東京の方で起きた凶悪犯罪に移った時、身体が急にだるいような感じがしてきた。
 悪い予感が胸の中に沸き起こったが、幼い悠太は先生の言いつけをお利口に聞くことの方が、悪い予感に対処するよりよっぽど大事だと判断した。無理に足に力を込めて、何とか立っていると、身体の末端がだるさを通り越してきて悪寒に変わってきた。
 体中から脂汗が吹き出し、それなのに体は氷のように冷たかった。そのうち、悪寒は頭にまで広がって、気持ち悪くて仕方がなくなった。
 悠太はやっとそこで、担任の先生に助けを求めようとした。
 しかし事態はすでに遅く、強い酩酊感と不快感が身体中をどきん、どきんと駆け巡って、悠太は地面に倒れ込んだ。
 それ以降のことを、悠太はよく覚えていない。
 しかし、眠ってもいないはずの悠太は、たしかに夢を見たのだ。
 自分は小さな近所の公園で、夕日が迫る中、一人遊んでいた。
周りからは子供たちの声が聞こえているのに、誰も周囲にはいなかった。悠太はそれを当たり前のことだと思い、一人でブランコを前後させて遊んでいた。
夕日が沈みかけ、そろそろ辺りははっきり見えなくなってくる。
 そこに、一人の女の子がやってきた、
 顔は、思い出せない。きっと彼女に顔なんて無かったのだろう。
 顔の無い彼女は、「はい」とだけ言って紙を渡してきた。
 それを見た悠太は、そこに書かれている言葉の意味がよく分からなかった。どうして彼女が、わざわざ自分にそんな言葉を見せたのか、未だによく分からない。
 そこには簡単な単語が羅列してあった。
『時よ止まれ 分析 現在 価値 等しく 総合』
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