星屑ひろいの少年(上)

□梗概
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高校二年生の「僕」は、オープンキャンパスで東京に行った帰り、上野公園近くの美術館で一枚の絵を見つける。偶然居合わせた大学教授のおじいさんに、その絵の作者と成立した背景についての話を聞く。
 絵本作家になることを漠然と夢見ていた中学二年生の小宮山悠太の元に、ある日、日本政府から月への招集状が届く。帰還後、破格の奨学制度と優遇措置を受け取ることと引き換えに、一年間、月面で新しいエネルギー資源「スターダスト」を収集する活動に従事しないかと言う勧誘だった。
 曖昧な気持ちのまま、父親の強引な説得で悠太は月へと送り込まれる。しかしそこは、地球より厳しい気候の中で過重労働が行われる、強制労働の現場だった。
 悠太は、「上官」と呼ばれる現場監督に強く叱りつけられたある日、一人でアルコールを舐めて憂さを晴らしていた。そこで、白いワンピースを一枚纏っただけの少女に出会う。悠太は、彼女を宇宙人ではないかと疑い出す。
 悠太は、苦しい環境の中で、かつてないほど自分の将来について真剣に考え始める。
そんな中、友人・小林の紹介で、美術大学の名門校に籍を置く古川と言う人物に出会う。彼から、知らなければよかった芸術家の現実を思い知らされ、絵本作家を目指す自分の気持ちを疑い始める。
 そんな中、悠太は上官に強く叱りつけられ、だんだんと絵を描くことが煩わしくなってくる。絵を描くことを放棄した悠太の目の前には、毎日の星屑採集の実績を競い合い、他人より一歩でも立場上、優位に立とうとする競争社会が広がっていた。悠太は、その競争に勝って抜きんでようと、今まで以上にスターダストの採集に身を入れ始める。
 そんなある日、地球の石油埋蔵量があと十年無い、と言う事実が発覚し、月での強制労働が後二年延期になると言う通知が下る。
 悠太は、その事実を知って、半ば自分の人生を放棄したような気持ちになる。
 そこに、謎の少女が現れ、悠太を勇気づける。悠太は、今までの悩みを乗り越え、もう一度月面で絵を描こうと決心する。
 悠太は、今度はここで強制労働に苦しみながらも、地球の人々のために働く仲間たちの姿を絵に残そうと思い立つ。そして、それを地球の人々にありのままに伝えようと考え始める。その中に自分の信念を描く時、それは一人の少女を象っていた。
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