松永さんと○○

□松永さんと壺
1ページ/1ページ


霧姫が勤めから帰ってきた。
大きな桐箱と共に。

「それはいったい何だね?」 

『壺です!!』

中身を取り出しながらそう言いのける。
それは知っている。見ればわかる。
霧姫‥私が君に言いたい事は何故そのような壺を持っているのかを知りたいのだよ。

『久秀さん、骨董がお好きなようですので‥
ざびー?とか言う人から安値で譲っていただいたのです。』

それは買ったと言うんだ霧姫。


ジロリと久秀さんの鋭い眼光が私を射抜く。
うぐぐ‥痛いよ久秀さん。
彼は骨董品を見るのが好きらしい。だから下手なお酒より喜ばれると思ったのだけど‥

これは絶対怒っている。

「‥卿は私に何か言うことがあるね?」

『‥スイマセンでした』

喜んでもらおうと思ったのに、思ったのに!!
何故かリビングのフローリングの上に正座だ。

「こんなヘンテコな骨董があるかね?」

『‥…』

ヘンテコって!!!
貴方の求めてる物もヘンテコって言えますよ!!
私には芸術がわからない。
だからこの壺も高価なものだと思ったのだ。

「コレハスバラシイ物デスヨー!!」

そう黒くて大きいざびーさんが言っていたから。

確かにヘンテコとは思いましたよ?
なんか壺って名前なのに注ぎ口があったりだとか表面に変な顔が書いてあったりだとか‥
だけどそこが良いんだろうと思っていた。

なのにそんなに怒らなくても!


「はぁ‥全く卿は‥」

呆れたようにため息をつきながら睨みつけないでください!
怖いです!!!

「今度から骨董を買うときには私を連れて行きたまえ。
霧姫に見る目がないことはよく理解しただろう」

『‥…はい』

あら、久秀さんが気を遣ってらっしゃる。

普通の人は何冷たいことを言ってやがんだ、このオッサン。
っと思うのでないだろか。

しかし付き合いの長い(?)私にはわかる。
これは

「霧姫に骨董を見るセンスはないが私の為に買ってきてくれたのだね。嬉しいよ。
今度は卿のセンスを磨く為にも一緒に見に行かないか?」

ってこと!!‥…なハズ。

要するにデートの話ですよね!

さすが久秀さん!!
直球で誘わないとは照れ屋さんですね!


『今度の休みは3日後です!』

「‥そうかね」

微かに目を細めて久秀さんは笑った。


(ならば卿にはいろいろと私が教えてあげよう)

(へ?別に骨董に興味があるわけじゃ‥)

(教えてあげよう)

(‥…了解です)

END

2015/04/01 霧姫

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ