松永さんと○○
□松永さんと朝
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目覚ましが鳴った。
起きてる、起きてるよ〜。だから止まってー!と目覚まし時計に念をとばす。
それをしたからといって鳴り止むわけでもないが‥
意識は起きている。だけど体が動かない。否、動かせない。
何故か。それは私と歳の差が離れているのにまだまだお若い彼のせいだ。
そんな彼はもう隣にはいない。きっと朝食の準備をしているのだろう。
彼‥松永久秀を倒れていたところを"拾った"。
目が覚めた彼が言った言葉、
「私はこの時代の人間ではないのだよ」
自分のことのはずなのに久秀さんは冷静で、私のほうが焦っていたと思う。
久秀さんは自分の置かれた状況を冷静に判断し、戻る方法を考えていた。見つかるまで家に居候する。それが最初の契約だった。
だけど今は探してもいないらしい。理由は教えてもらえないが何か思うことがあるのだろう。
そんな彼に心惹かれ、恋人同士になっていくらか時が過ぎた。
意外と私も慣れたもんだ‥とそんなことを考えていると寝室のドアが開く音がした。
そういえば久秀さんは電子機器の使い方や当時の時代になかった物の使用方法を覚えるのが早かった。パソコンとか私の方が知らないことが多いんじゃないかな‥
「霧姫、そろそろ起きたまえ。
じゃないと仕事に遅れてしまうよ」
でた!今回の怠さの元凶、松永久秀。
誰のせいだと思ってるんだ‥!!
私だって起きて美味しいご飯が食べたいよ!!と内心で思いつつ、ゴソゴソとシーツの中に潜り込む。
顔を出さないまま"起きてます"と伝える。
『も‥う少し‥…』
「私は別に構わない。むしろ仕事を休むなら、そちらの方が喜ばしい。だがしかし‥」
ギシッとベットのスプリングが跳ねる音が近くに響く。シーツに潜り込んでいる私の耳元に口を寄せ艶のある声で
「そんな弱っている姿を見ると煽られてしまうよ。卿が朝から私に抱かれたい、というなら別なのだけどね」
『起きます!!』
ばっと慌ててシーツの中から飛び出るとニヤリとした顔の久秀さんと目が合う。
「おはよう。今日はお寝坊さんかね?」
『おはようございます‥
いったい誰のせいだと思ってるんですか』
思わず恨み言を零すと後頭部を手で固定され深く口付けられる。
久秀さんはキスが上手。何度もしてきたけど息継ぎの仕方が未だによく掴めない。
「これで目が覚めただろう」
『前から起きてましたよ!!』
開放された時にはすっかり息が上がってしまっていた。それを満足そうに見ながら笑みを深くした久秀さん。
こんな彼と私の平凡でありながら特殊な生活のお話である。
END
2015/03/07 霧姫