短編集

□Happy Birthday!!と私
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私は今日11月2日、衝撃的なことを目の当たりにする‥

「あぁ。確かに今日は瀬戸の誕生日だが‥」

目の前で告げる古橋先輩の真っ黒で死んだような瞳を絶望的な気持ちで見つめた。

事の発端は花宮先輩がぽろっと零した「そういや今日、健太郎の誕生日だな」っという一言。

最初は全く信じていなかった(だって"あの"花宮先輩が言ったことだし)けど、たった今古橋先輩の言葉を聞いて確信した。‥…これは本当だ。

‥…どうしよう。知らなかったとはいえ健太郎先輩のプレゼントを用意できていない。
彼女が彼氏の誕生日を知らないのも変だけど、恋人になって初めてのイベントを逃してしまうのは‥…!

それだけはダメだ!!

しかも運がいいのか悪いのか‥
今日は私も健太郎先輩も部活も委員会もなく、久しぶりに早い時間で一緒に帰れる日なのだ。
普通だったら嬉しくて授業も頭に入ってこない程なんだけど、今日は違う。
それよりも重要なこと‥

そう健太郎先輩に何をプレゼントしていつ渡すか、だ。

『‥…そういえば‥!!』

今日、財布を家に忘れてきたんだった。
私の馬鹿!!
帰りに"健太郎先輩の欲しい物をプレゼントします!"っという手は使えない。
正直に誕生日を知らなかったことを告白、それからプレゼントを渡すのが一番。

(‥でも、健太郎先輩って何が欲しいんだろう‥)

私の中の健太郎先輩のイメージは、頭が良くて、寝ることが何より好きで‥バスケの練習にちゃんと出ているのを見ると律儀な人だと思う。

そんな彼に私がプレゼントを渡すなら‥

(やっぱり疲れがとれるものじゃないと‥)

私の悩みはその日の授業中、ずっと続いていたのだった。
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