短編集

□1.俺は平気だから、気にすんなよ
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1.俺は平気だから、気にすんなよ


『久秀様っ!!』

私はここの城の主であり、夫である人物を探し城を駆けまわる。

その理由はこうだ。

久秀様が珍しく共に城下に出てくれるとおっしゃってくれたので服を着替えようと自室に戻った際、新しく久秀様から着物をいただいた。
その着物の丈が短く、膝よりも上に裾がきたのだ。

そんなものを着て城下などに行けるはずもなく‥
違う着物を着ようとしたら部屋に着物がなくなっていることに気づいたのだ。

そんな悪戯をする人は一人しか思いつかない。

今日という今日は絶対に反省してもらわなければ‥…!!



『‥…ぶっ!!』

キョロキョロと周りを見過ぎて前をちゃんと見ていなかった。

ドンッと顔面からぶち当たり、痛む鼻を抑えながら後ずさる。

"すいません"と言いつつ、ぶつかった相手を見ると‥…

『久秀様っ!!!』

「派手にぶつかってくれたね」

そう言い笑う久秀様がそこにはいた。

煙管を片手に紫煙を燻らす彼の姿がとても幻想的で目を奪われてしまう。

その時、私は怒ることなど頭になく謝らなければということしか頭になかった。

『申し訳ございませんっ!
お怪我はありませんでしたか?』

「私は平気だ、気にすることはない。
それよりも霧姫、怪我はないかね?」

『はい、大丈夫です』

すると久秀様は私の方をちらっと見ると笑みを深くされた。

「やはり君にはその着物もよく似合う‥。
私の目に狂いはなかったようだ」

‥…着物。
そういえば‥…‥…!!!

『思い出しました久秀様!
この着物、どう見ても丈が短いですよ!!』

これを着て外に出られるわけがありませんっ!と裾を握りしめ叫ぶとニヤリと笑い

「確かに私は城下に行くとは言ったが‥
今日とは言っていないはずだ。

それに‥霧姫。
君のこのような姿、他の輩に見せると思うかね?」

『なっ‥…!!』

第一、この人は何を考えてこの着物を買ってきたんだ‥…?!!

久秀様の考えは未だによくわからない‥…

細い久秀様の顔が近づくなか、彼の瞳に映る自分自身を見ながらぼんやりと思ったのであった。

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