短編集
□5.誰が俺を好きにならないって?
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5.誰が俺を好きにならないって?
俺と霧姫が正真正銘の恋人同士になって早数ヶ月。
俺の溺愛ぶりに政宗や猿は毎日からかいにくるがそれもまた良しだ。
可愛いからな、霧姫は。
「帰ろーぜ霧姫」
『うん!』
最初の時のように普通の手の繋ぎ方なんてもうしない。
やるのは所謂恋人つなぎってやつだ。
『それでね‥』
霧姫は付き合い始めてからよく笑うようになった。
コイツが俺のことを意識し始めてる時に垣間見せていた表情を今はよく見せてくれている。
携帯には政宗達男以外は霧姫のアドレスしか入っていない。
"そんなことしなくてもいいよ"といつも霧姫は言ってくるが俺は独占されるみたいでいいなと最近思っている。
付き合って初めて知ったことだって大量にある。
色は暖色系が好きだとか意外と寂しがり屋で泣き虫だったりとか‥
洋菓子より和菓子が好きで植物の知識が豊富だとか‥
まだまだ一部に過ぎないのだろう、俺が知っているのは。
そんな彼女に今日、初めて贈り物をしようと思う。
朝から緊張しまくって、珍しく授業は全て起きていたわブラックコーヒーを買ったはずなのに微糖だったわ‥
俺らしくない失敗をしまくった。
『元親?帰らないの?』
「‥おっおう!!」
いつの間にか放課後になってやがった‥
下駄箱を出たところで渡すぞっと鞄の中を漁る。
あった。悩みに悩んで買った贈り物。
「霧姫、ほら‥」
『‥?ありがとう』
いかにも何だこりゃって顔をしている霧姫に"開けてみろよ"っと促す。
『これって‥…!!』
女の喜ぶもんっと言われ思いついたのはアクセサリーだった。
だけど好みはいまいち分かんねぇ。
「お前髪が長くなってきたからよ‥
これなら髪をまとめる時に使えるんじゃねぇかと思ってな」
あげたのは赤紫の和風のシュシュ。
パッと見て一番俺の好みだったんだ。
正直、気に入ってくれるかわかんねぇ‥
『ありがとう元親!!
ホント大好き!』
だけど霧姫は嬉しそうに満面の笑みを見せてくれた。
よかったぜ‥
「‥そういや霧姫。
お前は素直になったよな」
『そうかな?』
「あぁ。俺は今でも覚えてるぜ?
"私は元親のこと好きになったりしない"って言い切ったもんな」
それを言った途端、面白いぐらいに慌て出す霧姫。
『いや、それは‥…ね?
えっと‥…』
ったく、そんなとこも可愛いと思う俺は末期か。
「誰が俺を好きにならねぇって言ったんだかなぁ?」
『うっ‥』
照れたり焦ったり、見てて飽きることなんてない。
「まぁいいけどよ
俺は今が大切だからな。過去になんてこだわらねぇ。
ほら霧姫。俺の事好きなら、それをつけてくれ」
『もう‥!!またそうやって甘いのを吐く!!
私が断れないの知ってるくせに‥!』
ズルいよっと口を尖らせながら言う彼女は髪をシュシュでまとめてくれた。
だらしねぇとは思うけど緩む口元。
やっぱり俺の見立ては良かったぜ‥
霧姫の可愛い姿をもっと‥
「Hum...俺は霧姫には青が似合うと思うぜ?」
「俺様はオレンジー」
『え??』
ニヤニヤと俺を見るコイツら2人を黙らしてから吟味することとする。