短編集

□3.俺のこと気になり始めたんだろ
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3.俺のこと気になり始めたんだろ


元親とこんな関係になって数ヶ月。
自分でも前の彼氏よりずっと惹かれてきているのがわかる。

でも私は元親に言い切った。

"元親のこと好きになるわけない"
と。

だからこの自分の気持ちは認めない。
否、認められないんだ。

もし元親が本気じゃなくて遊びだったら。
私はもう誰も何も信じることができなくなりそうで‥

そんなことを考えてボーッとしていたら、いつの間にか放課後になっていた。

「霧姫、帰るぜ?」

その言葉に頷こうとして‥

『あ‥ごめん元親。ちょっと職員室に行かなきゃいけないや。
先に帰ってていいよ?』

「いや待っとくぜ。
ここで待ってたら重い荷物も置いていけるだろ?」

『そっか、ありがと』

教室のドアを開けて外に出て思う。
もう少し言い方あったよね、私!!


先生の用事って言うのも簡単なもので‥
なるべく早く終わらせて待っている元親のもとに向かった。


自分の教室に続く廊下を急ぐ。
やっと教室が見えてきた‥と思った時、その声は聞こえた。

「‥ずっと好きだったんですっ!!
長曾我部くんが!」

「‥…」

聞こえたのは自分の教室‥元親のいるところからで。
聞いちゃいけないと思いつつ、その場から私は動けなかった。

「‥…すまねぇな。
俺にはもう惚れてる女がいるんだ」

ぽつり聞こえた低い元親の声。
いつもと違う真面目な顔で言っているんだろう。

「それって‥霧姫さんの事なの?
悪いとは思うけど‥彼女は長曾我部くんのこと何とも思ってないわ。それに‥あの子より私のほうが‥…」

「‥黙れよ。
霧姫よりお前がいいだぁ?
寝言は寝て言いやがれ!!
それにな‥アイツが何とも思ってなくても俺はずっと思ってんだ。
それにな俺は‥お前のような女が一番嫌いだぜ」

突き放すようにその言葉には刀のような鋭さを含ませていた。

「っっ!!」

パタパタッと走る音が教室から聞こえた。私がここにいてはマズい‥と咄嗟に隠れようとするも逃げ場はない。

ガラッと開けられたドアから出てきた元親に告白した女の子は学年で5本の指には入る可愛い子。

私の方をキッと睨んで走り去っていった。あの子、怖いな‥

そう思って教室に入ると元親がいつものように迎えてくれた。

『元親‥さっきの子‥…』

「何だぁ?聞いてやがったのか」

さっきのことを聞いても顔色も変わらない彼。

「いいんだよ。俺にゃ霧姫がいれば。
あんな女よりずっとお前のほうが可愛いぜ」

『だってあの子‥
可愛いって有名な子だよ?私なんかよりずっと付き合った方が‥』

そこまで言いかけて言葉を飲み込む。
元親が私をぎゅっと抱きしめたから。

「私なんかって言うな‥
何度も言ってる俺は霧姫がいいんだ」

『‥。』

「霧姫‥
お前は俺を気になり始めてるか?
早く答えが欲しい、とは言わねぇ。
だからゆっくりでもいいから答えを俺に教えてくれ」

切なそうな声で私を抱く手に力を込める。
そんな元親に私は

『‥うん』

自分の本心は言えないままだった。

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