短編集
□2.まさか初めてとか?
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2.まさか初めてとか?
何だかんだで元親と"友達以上恋人未満"になった私。
何かと気にかけてくれる元親。
一緒にいることに抵抗はないんだけど‥
「ほら帰るぜ」
『うん』
‥…なっ何だか緊張してしまうんですが!!
前の彼氏とも手を繋いだりしたけど元親の手のほうが温かく感じる。体温の高い子供のよう。
家は私のほうが近く、ちょうど元親の通学路の途中だからこの関係になってからは毎日一緒に行き帰りしている。
「今日の英語の抜き打ちテスト、あれ分かったか?」
『あれ?簡単だったよ』
「っと言いつつ点数悪かったら俺は笑うぜ」
『そこは慰めてよー!』
そんな他愛のない話をしているとあっという間に私の家の前に着いた。
『今日も寄っていく?』
いつも送ってくれるお礼に勉強を教えたりお菓子を一緒に食べたりするのだけど
「いや、今日はいい」
珍しいこともあるものだ。
少し名残惜しいけれど今日はここでお別れ。
じゃあね、と口を開こうとした瞬間
「礼はここで貰うからよ」
っとクイッと顎を元親のゴツゴツとした男らしい指が上を向かせる。
『も‥元親?』
「馬鹿、目でも瞑ってろ」
ニィっと悪巧みをしている子供のような笑みをしながら顔を近づけてくる。
そんな事言われても頭がパニックして冷静な判断ができない。
だんだんと近づいてくる元親は見たことがないような男の顔をしている。
それが急に怖くなってきて目尻に涙が浮かんでしまう。
あと少しで唇が重なるっというところで
「おまっ‥まさかキスもしたことないのか?」
私の反応を変に思ったのか怪訝そうに尋ねてきた。
私はその問いかけに"こくこくっ"と真っ赤な顔を下げつつ頷く。
「‥早く言えよな」
乱暴に自分の頭を掻きながらつまらなそうに言う元親。
『‥…‥…』
まだ何で彼がこんなことをし始めたのかが分からなくて元親を直視できない。
「気にすんな。
ちゃんと霧姫が俺を好きになってくれてから何度もしてもらうつもりだからな」
今日はもう帰るぜ、と言う元親を見て安堵しつつも少しだけ残念に思う私がいた。