短編集
□あなたの名
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"ピンポーン"
軽快な音が部屋に響く。
読んでいた文字の羅列から視線を上げ時計を見る。
14時。
こんな時間にいったい誰だろう。
何かの集金だろうか?
それとも宅急便?
どちらにせよ、あまり待たせてはいけない。急ぎながら考えた私の予想は見事に外れることとなる。
ドアを開けると外は白銀の雪景色。そしてその中にポツリと立つ黒い影。
『瀬戸先輩!!』
立っていたのは私の霧崎第一高校の先輩であり、お付き合いしていただいている方。
いつも寝ているのに今日はどうしたのだろうか‥?
しかもこの寒い中‥
『と、とりあえず寒いので中に‥』
「いや、いいよ。
それよりも散歩でも行かない?」
『‥…‥…!!
是非ご一緒させていただきます!』
とこのまま家を出ようとして改めて考えなおす。私が今着ているのは部屋着だ。さすがに寒い。
ちょっと待っててください!
と先輩を玄関に招き入れ、そう言い残し自室に戻る。
セーターに着替えてコートを羽織る。
少しでも見栄えが良くなるようちゃんと考えて。
先輩は何とも思っていないかもしれないけれど‥これはデートだ!
それが嬉しくてテンションが上がる。