今日はなんの日?

□団子より華
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また夢を見る。
桜の季節に入ってずっと見る夢。

大きな桜の木の下で私はある人と出会う。

『こんにちは』

「あぁ君かね」

その夢の中で会う白髪混じりのオシャレなおじ様。
お互いに名前も知らないし、たまたまそこに居合わせた人同士のような脆い関係。

だけどこの夢を見る時は必ずこの人と出会った。

『満開になっちゃいましたね‥』

夢を見始めた頃は1分咲きともいえない状態だった。
それがあっという間に満開の桜になってしまった。

この桜が散ってしまったらきっと私はこの人に会えなくなるのだろう。

「君とのこの時間もあと少ししかない‥と言うことか‥」

『‥…。』

心の中を知っているかのように言われた台詞に驚いて言葉を失ってしまった。

‥もう会えない。
伝えたいこと何一つまだ言えてないのに。

いつ曖昧な記憶として忘れてしまうかわからない。

そんな彼に惹かれている私はこの時間だけが唯一伝えることのできる時間なのに。

「君は"運命"と言うものを信じるかね?」

不意に投げかけられた質問。

この桜に導かれて彼に出会えたのならば私は喜んで運命を信じよう。

『‥私は"ある"とは言いきれませんが"あってほしい"と願っています』

だから信じてみたいです。

と言葉を紡ぐと彼は嬉しそうに笑い、右手をあげる。

「君に私が"運命"があると教えてあげよう。

‥まだ聞いていなかったね。
君の名は?」

『霧姫です
雨宮霧姫‥』

貴方は‥…?と尋ねようとすると彼が指を鳴らす。
その途端、強い風が吹いて桜吹雪が巻き起こる。

‥ダメッ!桜が散ってしまう!

そう思ったのは一瞬で、あとは花びらの舞う美しさに目を奪われていた。

「霧姫‥
霧姫、か」

何度か私の名を復唱すると彼は背を向け

「霧姫、覚えていてくれたまえ。
私はこの場所で必ず待っている。
私の名は‥"    "」

その言葉を聞きながら私の意識は暗くなっていった。
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