守護霊でいず!!!

□見たくねぇもの
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『うっ‥…うぅ‥…ぐずっ』

「ほらよ」

『あ‥りが‥…と』

目の前に出されたタオルを受け取り、涙を拭う。
それだけでは止まらず目の下にタオルを当てる。

ずるずるっ‥
あぁマズい‥鼻水が‥…

「ほら」

目の前に差し出される箱ティッシュ。お礼を言いつつ素早く2,3枚取る。
鼻をかみゴミ箱にシュートする。

そんな事を数回繰り返し‥



「霧姫」

『‥ん。』

ボロボロと泣きながらTVでやっている映画を観ている霧姫に声をかける。

「お前なぁ‥この映画観んの何回目だよ」

『5‥…ぐず』

「俺は台詞まで覚えたぞ」

コイツは物覚えが悪いわけじゃねぇんだが‥
この映画とやらだけは何回も観ている。
そして毎回‥…

『うぁぁぁぁぁ!
死んだぁぁぁ!!』

「うるせぇぇ!!」

好きなキャラクターが死ぬシーンの前では泣き、そのシーンに突入すると叫びながら号泣する。

『うっうっ‥‥』

「‥…‥…」

確かこの映画は文庫化されていて買っていた気がする。
そして同じページで毎回泣いて色が変わっていた。

『‥…ぐずっ‥』

きっちりエンディングロールまで観ている間にコーヒーを淹れてくる。
コツっとテーブルの上にコップを置き、TVに集中している霧姫の横顔を見る。

‥…少し嫌なものだ

俺が泣かしたわけでもないし、誰が悪いわけでもない。だけど‥

(泣いてる顔なんて見たくねぇもんだな‥)

真っ赤な瞳で鼻をすする姿を見て手を握りしめる。

(腕の中に閉じ込めてやろうか‥)

そんな事を考えていたら、いつの間にやら終わっていたのか霧姫はTVを消していた。

両手でコップを持ちながらこちらを見ていた。

『どーしたの?』

「あぁ‥いや‥」

何でもねぇと適当に誤魔化したが‥

今度泣き顔を見たら実行してやろうと心に決めた。

END

2015/01/29 霧姫
 

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