今日はなんの日?
□春の足音
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妹に未練たらたらの兄様には帰っていただき、元親さんと縁側でひなたぼっこをしていた。
『まったく‥…兄様には困ったものです。何かしら理由をつけてこちらに来るのですから‥』
「それだけ霧姫のことが大切なんだろ?
アイツにしては分かりやすい愛情表現じゃねぇか」
『少しは自立してほしいものです』
ぽりぽりと軽い音をたてながら豆を食べつつ呟く。
「でもアイツが来てくれて助かったぜ‥すっかり今日が節分ってことを忘れてた」
『私もです‥
どうしますか?豆まき‥しますか?』
「神事だからなぁ‥しねぇとな」
『なら、やりますか。元親さん』
今まで兄様とやっていた事を元親さんと出来るのはすごく嬉しい。玄関に二人で向かう途中、自然と頬が緩んでしまっていた。
『元親さん、ほら豆を持ってください』
すると不思議そうな顔をする元親さん。
「俺は鬼役じゃねぇのかい?」
『毎年、元親さんが鬼役でしょう?たまにはいいじゃないですか』
それじゃいきますよ、と元親さんに笑いかけて豆を外に投げる。
『福はうち!鬼もうち!』
「っ?!!それは‥?」
『前に書で読んだことがあるのです。地域によってはそう言うこともあるそうですよ』
せっかく年が越せたのに鬼だけ外に出されてしまう、私はそれが嫌だった。そんな時、読んだ書に書いてあったのだ。
『ほら、元親さんも!』
「あ‥あぁ。」
私が軽く促すと元親さんも豆を投げてくれた。ぱらぱらと落ちる豆の音。
『「福はうち!鬼もうち!」』
元気の良い声が玄関から響く中、微笑み合う二人を暖かく見守る元親の部下達。
春の足音が少し聴こえたような気がした。
END