シザンサス

□27,スリラーバーク
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「チッ、ダメだな。いくら叩こうが蹴り飛ばそうが、この蜘蛛の巣、ビクともしねぇ」

言って、フランキーはため息をついた。


―――数分前、高波に攫われたサニー号は、ブルックが乗っていたルンバ―海賊団の船と共に、スリラーバークの沿岸まで流された。

そこには大きな蜘蛛の巣が張られており、絡めとられたサニー号は動けなくなってしまったのだ。

傍に、正面玄関と思しき門がある辺り、一味は誘い込まれたのだろう。

ゾロが鼻を鳴らした。

「フン、気に入らねぇな。殺しに来るでもなく、いったい何がしてぇんだ? ここの連中」

「かげ、ほしいの、かも」

「影だァ?」

「もりあ、かげ、ぬいて、したい、いれて、ぞんび、つくりたい、かもって、さっき、よそう、した。かげ、つよい、ほど、したい、きょうじんな、ほど、ぞんび、つよくなる」

「だから俺たちの影を狙ってると?」

「(コクン) …おくごえの、しょうきんくび、いるから」

「お〜いゾロ〜!ティオ〜! 早く降りて来いよ! 行くぞ冒険!」

「アホかクソゴム。3人を迎えに行くのが先だ。ティオちゃん、どっちだい?」

「あっち」

「…え? あっちって、島の内部じゃねぇか。堀に落ちたんじゃなかったのかい?」

「(コクン) …みにいったとき、は、ほりのなか、だった。たすけ、よんでくるから、ちじょう、あがって、まってるよう、いった」

「ということは、何者かに攫われたか、襲われて逃げているうちに、内陸部へ進んでしまった、という可能性もあるわね…」

「アイツらの安否は?」

「とりあえず、ぶじ。かんじょう、は、あせったり、あんしんしたり、くりかえしてる、けど」

「つーかよぉ…」

フランキーが腕を組んで言う。

「アイツらがどこにいようが、道が1本しかねぇんだが?」

…確かに、進める道は、3人が落ちていた堀へと続く下り階段だけ。

ルフィが笑って言った。

「まぁいいじゃねぇか! 行ってみようぜ!」

「…はぁ。(しょ)(ぱな)から先が思いやられるぜ」

「ふふっ、スリルがあっていいじゃない?」

一行は、目の前の下り階段を降りていった。

「おっ、地面がガイコツだらけだ!」

「かなり古いものから新しいものまで、年代はバラバラね。ここには何か、人を食べる生物がいるのかしら」

「呑気だなァお前は…」

「あれ、だと、おもう」

「「「?」」」

ティオの指が、前方を指す。

「「「グルルルルル…ッ」」」」

体長3m前後で、頭が3つある犬科生物がいた。

ケルベロスだろうか…

「うははっ、じゅるり…」

普通は怖がるところだが、ルフィはヨダレを垂らす。

「「「ガウ!?」」」

ケルベロスは今までされたことのない反応に戸惑った。

…しかも、予想外の反応はルフィだけに留まらない。

「へぇ、ケルベロスか。地獄の方が安全だろうに」

「あら、かわいいわね」

「アイツ、喧嘩売ってねェか?」

「生意気だな」

「1ぴき、いぬじゃない。きつね」

「うめぇのかなぁ!」

「「「ワウウゥゥッ!?」」」

ケルベロスは青ざめ、尻尾を下げた。

「にっしっしっしっ、バウっ! バワワウ! バウっ!」

ルフィが鳴き真似で威嚇し返すと、ケルベロスたちは慌てふためく。

その子供じみた様子に、ゾロとサンジは呆れた。

「「おいおい…」」

追い詰められたケルベロスは、負けじと吠え返した。

「「「バウワウっ!!」」」

「ん、何だ? ヤル気になったみてぇだぞ」

「つーより、開き直ったな」

「みたいね」

「んじゃ俺が…」

"チャキ…"

ゾロが刀の鍔を弾く。

と、ルフィがそれを制した。

「いや待て。手なずけてみよう!」

「ぁあ? 手なずけるったってお前、犬の元締めみてぇな奴だぞ?」

「ティオが空島で、オオカミ手なずけてただろ? たぶんてきとーにやればイケるよ」

「いや、あれはティオちゃんが狼になれるからで…」

「よーしよしよしっ、お手!」

ルフィは全く話を聞かず、ケルベロスに向かって手を差し出した。

当然…

"ガブッ"

3つの口がルフィに噛みつく。

フランキーは呆れた。

「言われた傍から…」

「ふふふっ」

しかし、その程度でルフィは動じない。

「よーしよしイイ子だ〜」

「「「ワ、ワゥ!?」」」

噛みついたのに撫でられて、戸惑ったケルベロスは口を離した。

「よ〜しよしそうだ、ゆ〜っくり離せ? ゆ〜っくりだ。そうだ、よ〜しイイ子だなぁ〜…こんにゃろォォ!!」

"バキャッ!"

ルフィは思いっきりケルベロスを殴り飛ばした。

もちろん、ケルベロスは地に伏す。

「ふせ!」

「「いやいや…」」

すでに伏せてるだろう…

 
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