シザンサス

□16,夢とカエルと海列車
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―――怖い、恐い、コワイ。


気づいたら頭の中に映像が流れ込んでいた。

自分の足が踏んでいる、床材となった石の記憶を遡っていく。

何千何万回も人に踏まれるところ。

床にはめ込まれるところ。

採石場で職人に切り出されるところ。

山肌の一部として岩であり続けていた時代。

何億年にもなろうかという石の記憶が、際限なく頭の中で溢れた。


―――長い……長い…長い、長すぎる。


永遠に等しい時を、ただ感情もなく孤独に過ごし続けた石の記憶に、いつしか発狂した。

気持ち悪くて、その場から逃げ出した。

でも地面はどこまでも続いているから、いつも何かの記憶が勝手に流れ込んで……



―――そのうちに、知った。



人間としての感情があるから苦しいんだと。



だから……














感情を、消した―――。














  
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