シザンサス

□14,デービーバックファイト
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要塞ナバロンを出てから、ほぼ1日が経過した。

朝日だった太陽は既に沈み、大きな三日月が船を照らしている。

メリー号はフレイムダイヤルを使い、熱気球の要領で未だ空を飛んでいた。

ウソップとチョッパーが船底を修理する時間を稼ぐためだ。

「方角はどうだい、ナミさん?」

「ふふっ、バッチリよ!」

「さっすがナミさぁん!」


"カン、カン、カン、カン……"


「こんなこともあろうかと、ドックで板キレを頂戴しといてよかったぜ〜」

「さすがウソップだな!」

「へへへっ。……よし、これでしばらくは何とかなるだろ」

2人が修理を終える頃、タイミングよくフレイムダイヤルが燃え尽きた。

「あ、消えた!」

ルフィの声で、ゾロとティオが昼寝から目を覚ます。

……いや、時間的に昼寝なのかどうか。

「燃料切れか?」

「ひ、なくなった。また、ためない、と」

サンジが船底へ声をかける。

「お〜いウソップ、チョッパー。着水するから上がってこい」

「なにっ!? 急げチョッパー! そこの板、全部持ってこいよ?」

「おう分かった!」

2人が登ってくるまでの間、ルフィはサンジにライターを借りて、ちょろちょろの火をタコに向けていた。

「頑張れ! タコ風船!」

「アホか! そんな小せぇ火でどうにかなるわけねぇだろ! 早く伏せろ!」




"ヒュォッ……ザバァンッ!"




メリー号は無事着水した。

浸水してこないところを見ると、ウソップのツギハギ修理も落ち度はなかったらしい。

「くぁ〜っ、何とか間に合った〜」

タコは元の大きさに戻り、チョッパーにかすり傷を手当てされていた。

「よし、これで大丈夫だからな」

「一度ならず二度までも世話になったな! サンキュー!」

バシャン、と、ルフィはタコを海へ返す。

「元気でなぁ! 青海で気のいい仲間つくるんだぞ〜!」

「どうせだ、グランドライン中のタコ、全部占めちまえ」

「あばよ、海鮮食材」

「ありがとね〜! 気をつけて行くのよ〜!」

タコは見送る一味に足を振って見せ、海の中へ潜っていった。

それを見届けると、ルフィが一言。

「さ〜て野郎共、帆を張れ! 行くぞ! 次の島〜!」

しかしウソップは嫌そうな顔をする。

「おいおいちょっと待てルフィ……少しは休ませろ」

ナミがため息をついて言う。

「何言ってんのよ。そんなこと言ってられる海なら誰も苦労しないでしょ?」

「はぁ……ンなこと言ったって」

座り込んだままのウソップを、ティオとゾロが見下ろした。

「うそっぷ、だらしない」

「日頃から鍛えねぇからそうなるんだ」

「オメェらはずっと寝てただろ!」

「はいはい! みんなさっさと動いて! さっきから波の動きが変なの。取舵よ!」

「はぁ〜いナミすゎん!」

そのとき、メリー号の背後からやけに大きな波の音がし始めた。

見れば高波が迫っている。

「ふふっ、ほら来た」

ニヤけるナミに対し、ウソップは絶叫。

「ぎゃああああっ! 全速前進!」

「ん? 何だありゃ……波ン中に何かいるぞ!」

サンジが波の中を指差すと、一味の視線が全てそこへ向いた。

「しーもんきー。いたずらずきの、はんぎょえん。ふね、みつけては、たかなみ、おこして、しずめようと、する」

「冷静に言っとる場合か! ……つーか、半魚人ならぬ半魚猿なんて言葉あんのかよ」


メリー号はすぐさま帆を張って、大急ぎで波から逃げた。

 
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