ブラキカム
□10,天才問題児
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―――その日の日没。
(……アイツ、今日は遅いな……)
修兵は執務室で仕事を片付けながら、ふと、格子戸から空を見やった。
考えているのは、相変わらずサボリ魔な三席のこと。
ここ最近、井上織姫や朽木ルキアに修行をつけている遊楽は、だいたい日が沈む前に隊舎へ帰ってくることが多い。
そして、修兵の部屋に泊まっていくのだ。
……しかし今日は、既に日が沈んでいるというのに、帰って来ない。
(まぁ、アイツのことだし、どっかで道草くったり、酒飲みに行ったりしてんだろな。……つーか、別にアイツのこと考える必要ねぇだろ)
遊楽の遊び癖など、今に始まったことではない。
修兵は頭を振って、残り僅かな仕事に集中した。
二時間後。
尸魂界はすっかり夜闇に包まれた。
(今朝、また夕方に〜とか言ってたよな……)
修兵は、未だに姿を見せない遊楽に、若干の不安を覚えていた。
時折、飲んだくれてそのまま次の日まで姿を見せないときはあったが、帰ってくると言ったのに帰って来ないことは、無かった。
(何かあったとか……って、ンなワケねぇか。そしたら地獄蝶なり何なり、連絡が回ってくるはずだ)
「あの、檜佐木副隊長!」
「?」
聞き慣れない声に呼ばれて、修兵は後ろを振り向いた。
「朽木?」
そこに居たのは、十三番隊の朽木ルキア。
何故こんな時間に九番隊に居るのか……
「どうした」
訊くと、ルキアは背筋を正して答える。
「先程、月雲殿から伝言を頼まれまして……」
……聞けば、今日も遊楽は、十三番隊舎でルキアと織姫に修行をつけていたそうだが、途中で技術開発局に行くと言い出したらしい。
そして、行ったきり戻ってくることは無く、日没に2人が修行を終わりにして隊舎に戻ろうとしたところ、ようやく戻ったそうだ。
「で、そのとき伝言を頼まれたってことか」
「はい。月雲殿曰く、これから現世に行ってくる、帰りは数日後になる、と……」
「現世か……」
昨日、遊楽は崩玉の能力について疑問を持っていた。
もしかすると、崩玉の能力について、浦原喜助に確認に行ったのかもしれない。
「わざわざご苦労だったな、朽木」
「いえ……。それでは、失礼致します」
「あぁ。ありがとう」
ルキアは丁寧に頭を下げると、小走りで去っていった。
修兵は数秒、その後ろ姿を見送り、執務室へと踵を返す。
(現世か。……まぁ何にせよ、事件に巻き込まれたりしてなくて何よりだ)