デュランタ

□3,心を騒がす存在
1ページ/4ページ



旅禍の一件から、しばらく。

心の傷はともかく、体の傷は、皆癒えた。

黒崎一護率いる現世のメンバーも、数日前に空座町へ帰っている。

…これから、藍染たちとの戦いに向けて準備を始めなければ。

瀞霊廷の頭脳労働担当者たちがアレコレ考え始める中、技術開発局では…

「ふぁ〜〜……眠い…」

「今日もな〜んも反応ナシ、と。あ〜〜ダリ〜〜……」

「見張りなんてのァ、ナンも起きなきゃただの拷問だなァオイ」

電波計測担当の局員たちが、これでもかとダラけていた。

鵯州(ひよす)がイラつきをぶつけるように怒鳴る。

「おい、リン! テメェだらだら菓子食ってんじゃねぇよ! 茶でも淹れて来い! 気が利かねぇな!」

「ぅ、ぁいっ、すいませんっ、すぐに…」

"ビーッ、ビーッ、ビーッ"

突然、計測器が音を発した。

リンが慌てて報告する。

「は、反応ありました! 座軸三六〇〇〜四〇〇〇、東京・空座町東部! 補正と捕捉、お願いします!」

局員たちが、水を得た魚のようにコンピュータに向かう。

"カタタタタタ……"

そこへ、阿近が様子見にやって来た。

「おーう、調子はどうだ?」

鵯州がニヤっと笑って振り向く。

「おう、いいとこに来たな、阿近」

「…あ?」

「見ろよ、来たぜ」

「…成体か」

「あぁ。数は2体。霊圧・濃度・安定性、間違いねぇ、破面(アランカル)


技術開発局が仕入れた情報は、すぐさま山本元柳斎の元へ届いた。

瀞霊廷としては、まだ内部のゴタゴタが収まり切っていない以上、現世で事が起こるまでは静観しようと決めていたが、これでは動かざるを得ない。

ひとまず、少数部隊を編成し、現世の死神代行たちを援護することにした。








翌日の、昼。

「すか〜……すか〜……」

昨日、現世で破面(アランカル)が出没したことなど露知らず、一角は十一番隊舎の縁側で昼寝していた。

そこへ…

「はっ、はぁっ、一角さん!」

「…んが……ぁあ? …何だ恋次か。…ふぁ〜……どうした、ンなに慌てて」

「はぁ…はぁ……現世で破面(アランカル)の成体が出た話、聞きました?」

一角の眉がピクっと動く。

「…早すぎねぇか?」

「えぇ。上もこんなに早いとは想像してなかったらしくて、今さっき、俺とルキアに現世出向の伝令が来たんスよ」

「…で? 何で俺んとこ来てんだよ」

「隊長格以外で、俺が一番信頼できる戦闘員を選べと言われたんで…」

「……」

「お願いします、一角さん! 俺らと一緒に来てくれませんか!」

「一護はどうしてる」

「え、あぁ、アイツなら、その破面(アランカル)共に手酷くやられたとか…」

「フン…」

一角は立ち上がり、斬魄刀を手に、大きく伸びをした。

「ふぁ〜ぁ、しょうがねぇ。アイツの根性叩き直しに行ってやるか」

恋次は表情を綻ばせた。

「ありがとうございます!」

すると…

「なら、僕も行こうかな」

弓親が現れた。

恋次は一角にしか声を掛ける予定が無かったため、たじろぐ。

「え、あぁいや、でも…」

「何だい? 僕が行っちゃマズイのかい?」

「いえ、そうじゃないんスけど…」

「じゃあいいじゃないか。僕も行くからね」

「は、はぁ…」

「あら、面白そうな話してんじゃない?」

「「「?」」」

声が聞こえて、三人が振り返れば、書類を抱えた乱菊がいた。

大方、十番隊から十一番隊へ、書類を届けに来たのだろう。

「あたしも行こうかしら」

「えっ、いや、でも乱菊さん…」

「ちょっと隊長に話してくるわ」

「え、あ、ちょっと!?」

恋次に有無を言わせず、乱菊は十番隊舎に戻って行った。



…数分後。

「あ、あの……何で日番谷隊長まで…?」

ご機嫌な乱菊と、額に血管を浮かべた日番谷が来た。

「松本が行くって聞かねぇからな。…しょうがねぇ、俺も行くことにした」

「そ、そうっスか…」

「うふふっ、決まりね? それじゃ、一時間後に穿界門の前で! 準備してくる〜」

まるでピクニック気分の乱菊。

日番谷は頬をひくつかせた。

「…いつからアイツの仕切りになったんだ」

 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ