シザンサス
□41,麦わら一味再集結
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ひとまず、レイリーもシャッキーも、サニー号の甲板へ上がってきた。
「少々、島の状況が忙しなくなってきたようだ」
「海軍が動き始めてるのよ」
「えっ、もう見つかっちゃったってこと?」
「あなたたちが見つかったワケじゃないみたい。ニセ者のモンキーちゃん一味を本物だと思って、大きく動き出してるの。軍の通信を盗聴したから間違いないわ」
話していると、ロボ談義が一区切りついた男3人も寄ってくる。
「ん? あれ!? いつの間にかティオがいるぞ!?」
「うお〜っ、ティオ! 久し振りだな〜!」
「アウ! ちったァ デカく……なったか?」
ティオは、相変わらずの無表情で、手をスチャっと挙げた。
「ん。ひさしぶり。つもる、はなし、あとで」
淡々と挨拶を交わして、シャッキーの方へ向き直る。
「るふぃ、ぞろ、さんじくん、ぶるっく……ばらばら、うごいてる。じょうほう、どこまで、しらせてる?」
「ブルックちゃんには、ライブ会場の電伝虫で状況を伝えてあるわ。迎えも手配したから、もうすぐこっちに来るはずよ」
それを聞いて、フランキーは顎に手を当てた。
「ほォ? スターの座を捨てて来るか……やっぱりアイツは骨があるな……。おっと、そういやサンジには、子電伝虫を持たせてあるぜ? 少し前に聞いた限りじゃァ、ゾロと一緒らしい」
ウソップが両腕を組む。
「となると、連絡が取れてねぇのはルフィだけか……アイツ電伝虫とか絶対持ってねぇだろうし……。なぁティオ、位置は分かるのか?」
「(コクン)…いま、45ばん。46ばん、ほうめん、いどうちゅう。かいへいたい、も、46ばん、むけて、48ばんぐろーぶ、いどうちゅう」
「なっ、おいおいヤベェじゃねぇか! ルフィが海軍とぶつかっちまう!」
話を聞いていたレイリーが、口角を上げた。
「ルフィなら大丈夫だ。君達は一先ず船を動かしなさい。ここからなら42番グローブがいいだろう。海岸に近く、ルフィと合流するにも都合がいい。そこに全員を集めたら、少々慌ただしいが、それぞれの2年を乗り越えて、いよいよ再出発の刻だ」
他でもなくレイリーに言われると、自然と身が引き締まる。
「ナミちゃん、君が航海士だったな。コーティング船の操舵方法を教えるから、しっかり覚えなさい」
「あ、はい! 頑張る」
簡単な説明書きの紙を受け取り、ナミが操舵方法を習う間に、フランキーが拳を組む。
「よっしゃあ! とにかくまずは、42番グローブまで行くぞ!」
「「お〜!」」
2年という長い年月の果てに、サニー号の舵輪が、再びカラカラと廻り始めた。
船体が波をかき分ける懐かしい感覚に、心を躍らせながら、ウソップはまだ見ぬルフィやゾロ、サンジを想像する。
「ルフィもゾロもサンジも、この2年でどう変わったんだろうな〜。会うのが楽しみだ!」
「でも……」
「ん? どうしたロビン」
「ルフィが海軍と鉢合わせしそうなら、何か手を打った方がいいんじゃないかしら。捕まるようなことはなくても、大騒ぎになれば出航がしづらくなるわ」
操船方法を教えてもらったナミが、資料をくるくると丸めながら困ったように笑った。
「確かに。ルフィだけじゃなくて、ゾロの方も心配だし。サンジ君がついてるって言ってもねぇ……」
もはやクセで、チラリとティオを見る。
帰巣本能くらいは残っているルフィはともかく、方向音痴の化身であるゾロは、はぐれたが最後、ティオが迎えに行かなければ二度と船には戻れないだろう。
一瞬でも目を離せばとんでもないところへ行ってしまうゾロのお守りは、サンジには荷が重い。
ナミは顎に手を当てた。
(ティオにゾロを迎えに行ってもらうのは前提として、問題はルフィよね……アイツがトラブルを起こさないワケがないのよ……ゾロの迎えついでにルフィも……って、それじゃトラブルにゾロを、ついでにサンジ君も投入することになるじゃない!)
どうしたものかと悩んでいると、足元にチョッパーが駆け寄ってきた。
「ルフィたちのことなら、俺にいい考えがあるぞ! ティオと一緒なら、3人とも連れてこられる! にししっ!」
その頃、サニー号が向かっている42番グローブの隣、41番グローブでは……
『アウ! そういうワケだからテメェら、42番グローブまで来い!』
「了解、42番グローブの海岸だな」
サンジが、フランキーからの電伝虫に応えていた。
ガチャリと受話器が戻されると、近くの酒屋を見つめていたゾロが振り向く。
「何だ、誰かから連絡か?」
「あ? 聞いてなかったのか……。えーとな、"海軍"、"来る"、"俺達"、"船"、"逃げる"……分かるか?」
「分かるかァ! 何で片言だ! 文章で言え!」
「ティオちゃんみてぇな言い方の方が、脳が筋肉のバカには伝わりやすいと思ってな」
「よし、"お前"、"後で"、"斬る"」
「へいへい」
「それより、あっち、騒がしくねぇか?」
「あ? ……本当だな。"あっち"、"うるさい"」
「まだやってんのかそれ。……言っとくが、ティオの喋り方は単語の羅列じゃねぇぞ。口が回んねぇから切れて聞こえるだけで、喋ってんのは文章だ」
「……」
サンジは無意識に、じーっとゾロを見た。
その視線が気に食わず、ゾロは眉間のしわを1本増やす。
「何ジロジロ見てんだよ」
まるでため息でもつくように、サンジはタバコの煙を吐いた。
「何でもねぇよ」
……案外ちゃんと見てんじゃねぇか。
なんて、ゾロを認めたくないから口には出さないけれど。
代わりに、話を逸らすように、騒がしい声に耳をすませた。
「あっちは45……いや、もっと奥の46番グローブの辺りか……100……200……すげぇ数が集まってんな」
まるでティオのようなことを呟くサンジを、ゾロはチラリとだけ見る。
どうやらこの2年間で、かなり高度な見聞色の覇気を身につけたらしい。
けれど、認めたくないので、ゾロはフンと鼻を鳴らし、騒がしい声のする方を見つめる。
「経験則だが、騒ぎの中心にはいつもルフィがいる気がすんのは、俺だけか?」
サンジは嫌な予感がして、タバコを噛んだ。
「あー……否定できねぇどころか、それだけは激しく同意だ……」
騒がしい46番グローブを見つめ、2人の息がぴったり合った。
「「……いるな、アイツ」」