シザンサス

□映画:STRONG WORLD
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「おっ、そっち行ったぞルフィ!」

「よっしゃ! 任せろ! ん〜〜よっと!」

「あ〜らよっと! 次はチョッパーだ!」

「お〜ぅ!」


熱い太陽が照りつける、海の上。

暑くも穏やかな風に任せ、サウザンド・サニー号は、順調に次の島を目指していた。

甲板では、ルフィ、ウソップ、チョッパーがビーチバレーをしながらはしゃいでいる。

ブルックとフランキーは楽しそうな三人を眺め、ゾロとティオは昼寝、ナミとロビンは日光浴で、サンジはキッチンに立っていた。

「まったく、飽きもしないでよくやるわね」

呆れ顔のナミに、ロビンが微笑む。

「ふふふっ、いいじゃない。航海が平和な証拠よ?」

「…まぁ、静かなのも逆に落ち着かないからいいけど」


"クァ〜"


「ん?」

ナミの頭上で鳴き声が響き、影が落ちた。

ニュース・クーだ。

「一部ちょうだ〜い?」

呼びながらコインをちらつかせると、ニュース・クーは旋回しながら降りてきた。

ナミはコインと交換に新聞を受け取る。

「さてさて、世界の情勢は、と…」

バサッと最初のページを開く。

そして見出しを読んだ瞬間…

「……何よ、コレ…」

目を見開いた。

咄嗟に、甲板の方へと叫ぶ。

「ルフィ! 東の海(イーストブルー)が!」

「ん、お? どした〜?」



サニー号の甲板に全クルーが集まる。

緊急集会が開かれた。

「んで? 東の海(イーストブルー)が何だって?」

ナミが新聞の見出しを読む。

「『襲い掛かる脅威、突如消えゆく街の謎』……東の海(イーストブルー)で、一夜にして街が滅んでるみたい」

ルフィはナミから新聞を受け取った。

ウソップが横から覗き込む。

故郷が被害を受けていないか心配なのだ。

「…今のところ、あたしたちに関係ある島は無事みたいだけど……それも、いつまで続くか……」

「皆さん、東の海(イーストブルー)の出身なんですか?」

ブルックがコキっと首を傾げる。

近くにいたチョッパーが説明した。

「ルフィと、ゾロと、ナミとウソップは、みんな東の海(イーストブルー)出身なんだ」

「おや、そうでしたか」

「あれ? サンジもそうだっけ?」

視線を向けると、サンジは一人静かにタバコを吹かしている。

「ん、まぁ…生まれは北の海(ノースブルー)だが、育ちは(イースト)だ」

タバコから上がった煙が、細くたなびいた。

ルフィとウソップは、新聞に載せられた写真をじっと見る。

「ん〜〜? 何か暗くてよく見えねぇな」

「夜に撮ったんじゃねぇか? …なんかでっけぇ岩みてぇなのが落ちてんな……隕石か?」


と、そのとき…


「!」


ぴくっとティオの肩が動いた。

隣に座っていたゾロが、横目に見下ろす。

「…どうした」

「なにか、くる」

「「「えっ?」」」

「うえ、の、ほう」

言われて、仲間たちはみんな空を見上げた。

ウソップとチョッパーが、早くもアタフタし始める。

「なっ、何かって何だ!?」

「うっ、上!? なっ、何もねぇぞ!?」

「まうえ、ちがう。あっち。12じ、の、ほうこう。こっち、ちかづいてくる」

ティオが前方の空を指さすと、ウソップが望遠鏡をそちらに向けた。

「…んん? 確かに何か…。……岩?」

ルフィが眉間にしわを寄せた。

「岩ぁ?」

「あぁ。なんか岩の塊みてぇなのが浮いてんだ。距離はまだ100m以上あるな…。…ぇ、ってことは、あの岩、けっこうデカいぞ!? 島か何かじゃねぇのか!?」

「ひと、72にん、かくにん」

「あの岩島っぽいのに乗ってんのか!?」

「たぶん」

そうこう言っているうちに、浮遊した岩島はどんどん近づいてきた。

やがて、サニー号にその島の影が落ちる。

ルフィは目を輝かせた。

「おほ〜っ、すっげ〜! ホントに島が浮いてるぞ!」

一味は全員、船首に集まった。

通り過ぎてしまった岩を追いかけようと、フランキーが舵を切り、180度旋回する。

島船に追いつくと、航行速度を合わせ、後ろにピッタリついた。

ゾロが怪訝な表情で言う。

「空島の島の一つなんじゃねぇか?」

「ヨホホッ! これが"空島"ですか? ず〜っと昔に噂は聞いたことがありましたけど!」

サンジがタバコの煙を吹く。

「いや、何か違うだろ。雲じゃねぇし」

チョッパーが何かを発見し、指さした。

「見ろよ! 帆があるぞ! ライオンの顔みたいなのもついてるし! かっけ〜!」

引き続き望遠鏡を覗いていたウソップは、チョッパーの指摘した帆を辿り、マストのてっぺんまで視線を昇らせた。

「うおっ、海賊旗がついてるぞ!」

「ちょっと貸して!」

ナミがウソップから望遠鏡を奪う。

「…帆船……確かに海賊船みたいね…」

「空飛ぶ海賊船ってわけか…」


と、そのとき…


「!」


ナミが突然、周囲を見渡した。

「この風……。この方向はマズイわルフィ! もうじきサイクロンが来る!」

「なにっ? そうか、んじゃぁアイツらにも教えてやろう!」

ルフィは満面の笑みで、空飛ぶ島船に向かって叫ぶ。

「お〜〜〜〜い! こっちはサイクロンが来るぞ〜〜!」

「おいおいルフィっ、怖ぇ奴らだったらどーすんだよ!」

「お〜〜〜〜…お、ぉお?」

ルフィはきょとんと島船を見つめた。

…何か、キラリと光るものがこちらへ飛んでくる。

ふわりふわりとやって来たそれは、ちょうどルフィの手元で止まった。

「ん〜?」

「ど、どどど、どうしたルフィっ?」

ガクブルし身構えるウソップと、その足の影に隠れているチョッパー。

ルフィは飛んできたものを掴むと、ニッと口角を上げ、投げた。

「ナミ〜!」

「え、ちょ、あたしっ?」

ナミは反射でそれを受け取る。

仲間たちが近寄って来て、ナミの手元を覗き込んだ。

「ん? トーンダイヤルじゃねぇか」

「つーことは、空島にも行ったことあるってわけか…」

「いよいよタダモンじゃなさそうだな」

「まァ誰だっていいさ! ナミ、サイクロンのこと教えてやれ!」

「えぇ!」

ナミはトーンダイヤルに声を入れる。

『すぐにサイクロンが来る! 進行方向より9時に逸れて!』

その後、トーンダイヤルを島船に見せるように掲げると、トーンダイヤルは再び浮き上がり、島船の方へ飛んでいった。

それをある程度見送ると、ナミは素早く切り替える。

「よしっ、こっちも進路変えるわよ! みんな位置について!」

「「「おう!」」」

「フランキー! 取り舵いっぱい、9時の方角へ!」

「よし来た!」

「ついでにパドルも出しといて!」

「おうよ!」

「ルフィ、ゾロ、サンジ君、ブルック! 帆を畳んで!」

「「おう!」」

「分かりました!」

「は〜いっんナミすゎん!」

「他はみんな、甲板の荷物を固定! 帆を畳み次第、パドル回すわよ!」

「「おう!」」

いつもながら、俊敏かつ正確な指示と、鮮やかなチームワーク。

サニー号は無事、サイクロンの直撃を免れ、再び青空の下へと出ていった。

 
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