シザンサス

□映画:STRONG WORLD
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それから、シキの力でサニー号が宙に浮かべられた。

シキの島船の隣を、サニー号が飛んでいく。

いつも風来(クー・ド)バーストで空を飛んではいるが、あれは緊急脱出が主で、超高速だ。

今のように、ゆったりフワフワと飛ぶことは出来ない。

「うほ〜っ! 高けぇ〜!」

「気持ちいいなぁ〜!」

「カモメも下にいるぞ!」

欄干から下を眺めてはしゃぐ、ルフィ、ウソップ、チョッパー。

その3人の格好を、背後からナミがジト目で見つめた。

「…アンタたち、戦闘準備のイメージずれてない?」

ブルックもそれに賛同する。

「まったく、もう少し緊張感を持っていただきたいですねぇ」

「そうよねぇ…って、アンタがずば抜けてユルいわ!」

花柄のトップスに、左右で柄の違うパンツ。

そのままどこか娯楽施設にでも行きそうなファッションだ。

他のメンバーも、どこかお出掛け気分な組み合わせ。

「ん? なぁルフィ、何か見えてきたぞ?」

チョッパーが短い手で前方を指さす。

一味の視線が全てそちらに向いた。

見つめる先には、海水ごと浮かされた島々がいくつか浮遊している。

それらはどれも、シキの島船よりも遥かに大きかった。

「すっげぇなぁ〜!」

「まさかっ、この島も全部おっさんの力で浮いてんのか!?」

「あぁそうだ。一旦浮かせたものはそのまま浮き続ける」


…やがて、シキの島船とサニー号は、島々の中でも一番大きな島の上にさしかかった。

「…着いたな」

シキはニヤリと笑みを浮かべる。

「ここはメルヴィユ! 冒険好きのお前らにはうってつけの島だ! 存分に遊んでくるがいい!」

「「「 ? 」」」

突然声を張り上げたシキ。

麦わら一味は全員、首を傾げた。

シキは、くるりと後ろを振り返る。

その視線の先には、ナミ。

「そるっ」

"シュッ"

ティオはシキに蹴りかかった。

「やはり、お前は使える奴だったか」


"ヒュオッ、ガッ"


シキはティオの蹴りを片腕で受け止め、弾いた。

"ブンッ、ドサッ…"

「うぐっ…」

ティオは、芝生の甲板に叩きつけられる。

「ティオちゃん!?」

「何だ何だっ、どうしたんだ!?」

状況が分からず、慌てる仲間たち。

その合間を、刀を構えたゾロが駆け抜けた。

「三刀流、牛針(うしばり)!」

突っ込んできたゾロを、シキはふわりとかわし、ついでのようにナミを抱える。

"ガシッ"

「きゃっ! ちょっと、何よ!」

「ジハハ、惜しかったなァ」

シキは空中から、満面の笑みで一味を見下ろす。

「何すんだよおっさん!」

「くそっ、遅かったか!」

「何だ急に!」


「どっこいしょ!」


"グラ…ッ"



「「「なにっ!?」」」


突然、サニー号にかけられていたフワフワが解かれてしまった。

重力に従い、サニー号も麦わら一味も全て、メルヴィユへと落ちていく。


「「「うわあああっ!」」」


シキとナミだけはそのまま空に浮いていた。

「ジハハハハッ! 航海士は貰ったァ!」

「くそぉっ、ナミーっ!!」

ルフィが咄嗟に手を伸ばす。

けれど…

「ジハハッ、無駄だ」

シキがくるりと指を回せば、サニー号もぐるりと回る。

バットのように振り抜かれたサニー号のマストが、一味全員を打ち飛ばした。

「ひぎゃああああっ!」

「うぐ…っ」

「うええええええんっ!」

「どわぁあぁあぁっ!」

「のぉああぁぁっ!」

「ヨホホ〜!?」

「あぁぁ…っ」

「うわあああぁぁぁぁっ!!」



…全員、四方八方へ散り散りに飛ばされる。

「ジハハハハハハハッ!」

ナミは目を見開き、声の限り叫んだ。

「ルフィっ! みんなァっ!」

「さて、行こうか? ベィビーちゃぁん」

「離して! 何なのよいきなり!」

「ジハハハハハハッ!」


シキはナミを抱えたまま、フワリと自分の島船へ飛んでいった。




「……ぅ、くっ」

吹き飛ばされる重力圧に耐えながら、ティオは連れ去られるナミを見据えた。

"ボンッ"

鳥に姿を変え、何とか翼を打って体勢を立て直し、ナミの後を追う。

他の仲間たちは、覇気で伺う限り大丈夫だと判断した。

今まで死闘を乗り越えてきた一味だもの。

下に島がある以上、空から落とされたくらいじゃ死にはしない。

…けれど、ナミはどうなってしまうか分かったものではない。

シキがナミを攫った理由は、今のところ分からないのだ。

「……」

ティオは、少し離れてシキを追尾しながら、思考を巡らせた。

…金獅子のシキの情報は、頭に入っている。

センゴクやガープの記憶を見ているため、顔も知っていた。

だからこそ、サニー号にシキが降りてきたときは本当に驚いた。

海賊王ゴール・D・ロジャーや、四皇エドワード・ニューゲートと張り合い、大海賊時代の一翼を担った男。

彼はロジャーの処刑が決まった折、ライバルであったロジャーを海軍より先に殺すため、海軍本部に攻め入った。

それを止めるべく、ガープやセンゴクが応戦し、捕えた彼をインペルダウンへ投獄したのだが…

…その後、自らの足を切り落として脱獄し、行方を暗ましたとの情報がある。

世界最強の大監獄インペルダウンを脱獄できた者は、後にも先にもシキただ1人。

そのシキと、こんな形で出会うことになるなんて…

20年も身を隠していた彼が、どうして今になって表舞台に姿を現したのか…

「……」

久々に、諜報員として敵地に潜り込むときが来たようだ。

ティオは緊張を隠せないまま、慎重にシキの後を追いかけていった。

 
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