シザンサス

□番外:Gの侵略
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グランドラインの天候は変わりやすい。

「船体2時の方向へ!」

「「「おう!」」」

土砂降りの雨と、吹き荒れる暴風。

サニー号は、荒れ狂う波を巧みに掻き分けていた。




「…ふう、やっと落ち着いたわね」

数分後。

晴れ空の下に出ると、ナミは額を拭う。

芝生の甲板に、ルフィ・ウソップ・チョッパーが寝転んだ。

「はぁ〜〜疲れた〜…」

「毎度のことながら、サイクロンには手を焼くなぁ…」

「おれ、しばらく動きたくねぇ…」

3人を見降ろしたナミは、くすっと笑う。

「しばらくは晴天が続くから大丈夫よ。今のうちに休むことね」

「「「はぁ〜い…」」」

ゾロは既にトレーニングルームに向かっており、フランキーはエンジンルームへ、サンジは着替えに男部屋へ行く。

「…さてと」

ナミは着ていたTシャツの端を絞った。

「お風呂入ろうかしら…」

ボタボタと水が滴り落ちる。

そこへ、船尾の方からロビンとティオがやってきた。

2人とも、ナミ同様にずぶ濡れだ。

「……むぅ……かみ、おもい…」

頬を膨らませたティオは、羽ペンを抜いて髪を解き、絞る。

日に照らされて乾きかけていた床板が、再び濡れた。

ロビンが笑みを浮かべて言う。

「お風呂に入りましょ? そのままだと風邪を引いてしまうわ」

「(コクン)」

「あぁ、ちょうどよかった。あたしも入ろうと思ってたの。行きましょ」

「えぇ」

「(コクン)」

女子3人は、揃って風呂場へ上っていった。





「ん〜っ、生き返る〜!」

「お風呂、大きくなって良かったわね。メリー号の頃は、交代で入るしかなかったもの」

「そうね〜。フランキーってば、イイ仕事してくれたわ〜」

3人が一緒に入っても、サニー号の大浴場はまだまだ余裕がある。

「……ぶくぶく…」

「あっ、ちょっとティオ、寝ちゃダメよ?」

「ふふ、溺れてしまうわ」

「んぶ…」

湯に沈みかけていたティオを、ロビンが後ろから抱きかかえてやる。

もう沈まないと分かると、ティオは完全に寝てしまい、こっくりこっくり首を揺らした。

「ほんと、よく寝るわね。昼も夜も」

「そのうち、目蓋がくっついて開かなくなったりして」

「えっ、そんなことあるの?」

「ふふっ、どうかしら」

「ちょっと〜…」




十分に温まると、3人は風呂から上がった。

「ティオ、もうちょっと起きてて?」

「…うぅ……」

ナミとロビンが、フランキー作のドライヤーを2つ同時に使って、ティオの長〜い髪を乾かしていく。

濡れたままにしておくと、すぐに風邪を引いてしまうからだ。

「いーい? このあと寝るなら、湯冷めしないように気をつけるのよ?」

「……ん…」

返事なのか、そうじゃないのか…

「はぁ……分かってんのかしら」

「ふふ、きっと大丈夫よ。寝るならゾロのところでしょう? 何だかんだ、いつもティオのこと気遣ってくれてるもの」

「まぁ確かに。アイツどういうわけかティオには甘いし」

ティオの髪が乾くと、ナミがいつもの羽ペンで結い始める。

「そういえば、どうして羽ペンなんて使ってるの?」

ティオは、こっくりこっくり舟を漕ぎながら
呟いた。

「……もらった、の」

「貰った? 貰って、かんざし代わりにしちゃったの?」

ティオはゆっくり首を横に振る。

「その、ひと……かみ、やって…くれた」

「へ〜。羽ペンで髪まとめるなんて、変わった人なのねぇ」

「(コクン) ……へん、じん」


…そのとき、海軍本部でクザンがくしゃみをしたのは、偶然ではない。


「大事にしてるのね」

「「?」」

ロビンが自分の髪を乾かしながら、続ける。

「日に焼けて、無数の傷がついてる。少なくとも2年は使ってるんじゃない?」

さすが考古学者なだけあって、ほぼドンピシャだ。

この羽ペンは2年前、ちょうど伝承者の役を引き継いだときに使い始めた。

「(コクン) …だいじ、な、もの」

「よしっ、できた。…けど、いつか壊れちゃいそうよね。本来の用途で使ってるわけじゃないし、大量生産品みたいだから、丈夫でもない」

「(コクン) …かたち、ある、あいだは、だいじ、する」

ティオの人差し指が、羽ペンの羽部分をなぞった。

ナミは笑みを浮かべて、ティオの両肩にポンと両手を置く。

「さ、昼寝でも何でも行っていいわよ」

「ん、ありがと。…でも、そのまえ、に」

"ぐ〜きゅるるる…"

「おなか、すい、た」

「あぁそっか。アンタ朝起きるの遅かったから、まだご飯食べてないのよね」

「(コクン) …たべようと、したら、あらし、くるし…」

「きっとサンジ君が用意してくれてるわ」

「(コクン)」

ロビンがティオの手を取る。

「一緒にキッチンへ行きましょうか。私もコーヒーが飲みたいの」

「(コクン)」

「ナミも一緒に行く?」

「ううん、あたしはいいわ。天候が落ち着いてるうちに海図描きたいし」

「そう。頑張って」

「ん、ありがと」


ロビンとティオはキッチンへ、ナミは測量室兼図書室へと向かった。

 
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