シザンサス

□24,水の都、出港
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麦わら一味主催の大宴会の翌日。


「ふぁ〜…」

「もう昼だわ…」

朝方まで宴をやっていたため、麦わら一味は昼になってようやく起きてきた。

サンジが昼食を作ってくれるのを待つ。

「あ〜〜腹減ったぁ。サンジ〜、メシ〜!」

「今作ってんだろーが。もう少し待ってろ」

「はぁ〜い…」

「まったく、朝まで食べてたくせによく入るわね…。あ、サンジ君、あたしの分、いつもより少なめでお願い」

「はぁ〜いナミすゎん!」

「私の分も、そうしてもらえる?」

「もっちろんだよロビンちゅゎん!」

「サンジ〜! 俺は大盛りでな!」

「分ぁってるよクソゴム」

エニエス・ロビーの戦いで、一番重傷だったはずのルフィだが、怪我はもういいようだ。

対して…

「う〜ん……やっぱり治りが遅いなぁ…」

「しかた、ない。……ふぁ〜」

ティオの傷は治りが遅いようだ。

まだまだ歩けそうにない。

チョッパーが新しい包帯を取り出そうと道具を探る間に、ティオはもう一度ベッドに倒れ込んだ。

布団にくるまり、惰眠を貪る。

フライパンを操りながら、サンジが声を掛けた。

「ティオちゃ〜ん、ランチは食べられそうかい?」

ティオは既に眠りかけていて目が開かないらしく、小さく首を振って呟いた。

「……いい」

それを、包帯を変えていたチョッパーが代弁する。

「いいってさ」

「そっか、りょーかいだ」


…数分もすると、テーブルに昼食が並んだ。

昨晩がバーベキューだったことを考慮し、どの料理もあっさり系だ。

ティオを除き、みんなテーブルにつく。

「うっほ〜いメシだメシだ〜!」

「てめっルフィ! そりゃ俺のだ!」

「のぉぁぁ! それ俺ンだぞ!」

ルフィの伸びる手に自分の皿の料理を取られて、ゾロもチョッパーも叫びまくる。

「うるさいってのよアンタたち! …ったく、あんだけ宴会で騒いでおきながら…」

ナミは機嫌悪そうに今日の新聞を広げる。

一面を飾っているのは勿論、エニエス・ロビー陥落に関する記事だった。

「……ん、あれ?」

内容をざっと見通したナミの眉間に、しわが寄る。

コーヒーを飲んでいたロビンが小首をかしげた。

「どうしたの?」

「うん…それがね、フランキー一家のことが全く記事になってないのよ」

ルフィと料理争奪戦を繰り広げつつ、ゾロがまばたきを繰り返す。

「どういうことだ? アイツらあれだけ暴れてたってのに」

サンジがルフィを見て言った。

「お前のじいさんが、巻き込まれた一般人とでも情報をいじってくれたんじゃねぇか?」

するとルフィは眉を潜めて首を傾げ、ナミとチョッパーが、一緒になって手を横に振る。

「いや、そーゆーこまけぇことは」

「「うん、しないと思う」」

ただし、ロビンには、そういう細かいことをする人物に心当たりがあった。

(……青キジ)

一体、何を考えているのか。

考えが読めない。

ティオなら分かるかもしれないが、見れば、すよすよと穏やかな寝息を立てている。

サンジが肩をすくめて言った。

「まぁ何にしてもよかった。俺たちはともかく、アイツらこの先逃亡人生じゃ可哀想だからな」

いつの間にかナミから新聞を受け取っていたゾロが、口元を歪める。

「その代わり、俺たちのことは酷でぇ言いようだがな。世界政府に宣戦布告。島が燃えたことまで俺たちの仕業だとよ。へっ、こりゃまた懸賞金が上がりそうだ」

チョッパーが目を輝かせた。

「うはぁ〜! 俺も賞金首になれるかな!」

サンジも口角を上げる。

「まぁ可能性はなくもねぇと思うが、大変なのは俺だよ……くくくっ、巨星現るってか? あははっ」

「何喜んでんのよ! アンタたち馬鹿!? 馬鹿なのよね!?」

ナミの剣幕に、チョッパーもサンジも押し黙った。



…やがて昼食が終わると、それぞれ好きなように動き始める。

ナミは満面の笑みで金庫に向かった。

中には1億ベリーが入っている。

「さぁ〜て、船が完成するまでに〜ぃ、ゆ〜っくりショッピングを楽しも〜っと」

「んぁ? 船ってどーゆーことだ?」

首をかしげたルフィに、サンジがポンと手を叩いた。

「あぁ。お前は寝てたから知らねぇのか。俺たちがフランキー一家に奪られた2億ベリーあったろ? アレでフランキーの野郎、世界一頑丈な樹とやらを買ってたらしくてな。それで俺たちの船を作ってくれてんだ。あの海賊王の乗ってた船も、同じ種類の樹から作られたんだと」

「マジで!? アイツ意外とイイ奴じゃねぇか! どんくらい掛かんだ?」

「昨日来たときは5日欲しいとか何とか」

「5日か〜。あと4日ってことだな? 楽しみだなぁ〜っ」

その感極まった声を背に、ナミは金庫の鍵を開けて扉を開けた。

「んふふ〜、どんな家具を買おうかしら〜」

しかし―――


「……あれ?」


―――ない。


「え、あれ、えぇっ!?」

金庫に頭を突っ込んで、隅から隅までくまなく探す。

それを後ろから見たルフィとチョッパーは、引き気味に呟いた。

「変わったダンスだな…」

「…ダンスなのか? あれ」

やがて、金庫から頭を引き抜いたナミの手には、100万ベリー。

ナミはそれをじっと見つめたかと思うと、満面の笑みを作ってルフィを見る。

「ねぇ、ここにあった1億ベリーは?」

同じくらい満面の笑みで答えるルフィ。

「あぁ! 宴のときによ、肉やら酒やら買うのに、やった!」

「……やった?」

ナミのオーラが黒くなり始める。

「あたしたちのお金よ!?」

「俺たちの宴会だったじゃねぇか」

「何言ってんのよ! もうほんのちょっとしか残ってないじゃない!」

「だろうなぁ〜。最後は街中の奴らがいっぱい集まって来てよぉ、楽しかったな〜、あははははっ!」


"ゴチンッ!"


拳骨の衝撃で、仮設ルームが揺れた。

「ん……ぅ…?」

ティオが目を覚ます。

霞んだ青い瞳に映ったのは、頭や頬に大きなたんこぶの出来たルフィだった。

ティオはこてっと首を傾げる。

「るふぃ…あたま、おっきくなった?」

チョッパーが半目で言った。

「違うと思うぞ…」

真っ赤を通り越して、真っ青になるまで腫れた顔で、ルフィは膝をついたナミを励ます。

「ま、まぁまぁ、船は得したんだから、いいじゃぁねぇか…」

「うぅ〜〜…船に豪華な家具を入れようと思ったのに〜〜っ」

その肩に、ロビンが手を置いた。

「ふふっ、掘り出し物を探しに行きましょ? ねぇティオ、いいお店、知ってる?」

「(コクン)」

「あ、そうだ、ナミ、遊んでくるから小遣いくれ!」

性懲りもなく放たれたルフィの一言で、ナミの怒りが最高潮に達する。

「#$%&%#$&〜〜っ! アンタは無しよ!」

"ゴチンッ!"


「わっ、分かりました〜ぁ!」


…というわけで、ルフィとチョッパーは遊びに、サンジは食材の買い出し、ゾロは刀を探しに、ナミとロビンとティオは家具の買い出しに、それぞれ出掛けて行った。

 
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