シザンサス

□24,水の都、出港
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「つぎの、かど、みぎ」

「オッケー」

ナミとロビンは、ティオの案内でいくつもの家具店・雑貨店・中古品店を回っていた。

まともに歩けないティオは、鼬の姿でロビンの肩に乗っている。

「しょうめん、の、せかんどはんど、そのとなり、あるてろかぐてん、どっちも、おすすめ」

「セカンドハンドは中古家具店、アルテロ家具店は新品の家具販売店ね?」

「(コクン)」

「なんで新品と中古品を隣同士で売ってんのよ…」

「てんしゅ、きょうだい、だから」

「ふふっ、なるほど?」

「そうねぇ…せっかく隣り合ってる店だし、手分けしない? ロビンとティオは、そっちの中古家具店をお願い。いいの見つかったら教えて?」

「分かったわ」

「(コクン)」

2人と1匹は分かれて、それぞれの店に入って行った。

「いらっしゃ〜い。…お? アンタ、麦わらさんとこの! いや〜アイスバーグさんの件では悪かったねぇ。それと、昨日はご馳走さん! お詫びとお礼に安くしとくから、ゆっくり見ていってくれな?」

「あら、ありがとう」

中古品店『セカンドハンド』の店主は、30代くらいの恰幅のいい男だった。

ロビンに照れ笑いを見せた彼は、品出しがあるのか、店の裏へ入って行ってしまった。

街の復興中で、買い物に来ようとする住民はいないらしく、店にはロビンとティオだけ。

「へぇ、年代物の家具がいろいろあるわね」

「(コクン)…そのぶん、ふねの、でざいんと、あわせるの、むずかしい、かも」

「そうね。あの彼の造る船だから、シックなデザインはあり得ないでしょうし」

「(コクン)」

「……」

「……」


しばし、沈黙が降りた。


ロビンはゆったりと歩きながら家具を見る。

ティオも、その肩の上から家具を見ていた。


…やがて。


「てぃお、に、なに、ききたい?」

「!」

ティオの一言にロビンは肩を揺らした。

「うずうず、みたいな、かんじょう、かんじる」

「…言わなくても、ティオなら私の考えてること、分かるんじゃないかしら」

ティオは首を横に振る。

「きんきゅう、じたい、いがい、ほんにん、の、きょか、ないと、こころ、も、きおく、も、のぞかない。きめてる」

「そうなの…」

それなら、と、ロビンは口を開いた。


…けれど、いざとなると言葉が出て来ない。

訊きたいことは山ほどある。

ティオは、たった4年分の記憶しかない自分自身のことをどう思っているのか。

不安ではないのか。

記憶を取り戻したいと思わないのか。

それ以前に、どうして記憶が無いのか。

また、実年齢に反して体が幼いのは何故か。

そのことに、体が弱いことはどう関係しているのか。

5種類もの動物に変身できる、反則的で妙な能力のことも気になる。

アラバスタでバロックワークスにいた頃、クロコダイルが言っていた。

『悪魔の実の能力者ってことだ。…ククッ、偽物だけどな』

ティオの能力を"偽物"と言った言葉の真意は何だったのか。

そして、他でもなく"青キジ"と密接な関係を築くことになった理由は…

…疑問が浮かびすぎて、何を訊いたらいいか分からない。

「……」

ロビンはしばらく考えた。

頭の中を整理するように、疑問を整頓していく。

その果てに辿り着いた答えは…


「…何でもないわ」


ティオは横目にロビンの顔を見上げた。

何も疑問は解決していないだろうに、何故かスッキリしたような微笑を浮かべて家具を見つめている。

ティオはロビンと同じところに視線を落として、呟いた。

「……そう」

本当は根掘り葉掘り訊かれると思っていた。

そして、答えられることは全て答えようと思っていた。

「…本当はね、知りたいことが沢山あるの。あなたのことや、青キジのこと。……でも、仲間の過去を聞き出そうとするなんて、野暮じゃない? 他の仲間の過去だって、私は詳しく知らないもの。大事なのは今だって、教えて貰ったばかりだから。ふふふっ」

微笑みかけてくれるロビン。

「……」

ティオは数秒あっけにとられた後、そっとロビンの頬に身をすり寄せた。

ふわふわの毛並みに、ロビンも頬を寄せる。

…絆、とでも言うべきか。

何やら暖かい感情がティオに流れ込み、ティオがそれをロビンに送り返し、2人は互いの気持ちを共有した。

普通は知ることの出来ない相手の感情を、ティオがいれば知ることが出来る。

そんなことをしなくても、今の仲間たちなら世界一信頼に足るけれど、ティオの力が絶対の安心感を与えてくれる。

…本当に、いい仲間に出会えたと、ロビンは心から思った。

 
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