シザンサス

□23,涙の別れと海軍の英雄
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…しばらくすると。

「ん? 前から船が来るぞ?」

ルフィが前方を指さした。

一味は全員そちらを向き、そげキングのみ身構える。

「なっ、何だ!? 敵襲か!?」


「あっ、おい! 麦わらたちだ!」

「本当に生きて帰って来やがった!」

「お前らっ、よく無事で帰ってきたなぁ!」

メリーの何倍もありそうな巨大な帆船。

その帆には、"GALLEY-LA COMPANY"とロゴが入っていた。

「ありゃぁ…ガレーラ・カンパニーの船か」

「アイスのおっさんも乗ってるぞ!」

「フン…馬鹿バーグが…生きてやがったか」

「お〜いアイスのおっさ〜ん! ガレーラの大工たち〜!」

ルフィが手を振れば、ガレーラの大工たちが皆して手を振り返してくる。

アイスバーグも口角を上げてこちらを見た。


…そのとき。











―――よかった。



―――これで、もう…











ティオの耳に、声が響いた。

それが誰の声かなんて、分からないはずがない。

ティオは目を見開き叫んだ。


「めりーっ」


「「「!?」」」


尋常ならざる声に、仲間たちが振り返った。

次の瞬間…


"ギギギィィ……メキメキッ

バキャッ!"



…足元が、傾いた。

「「「うわぁあぁっ!」」」

全員、バランスを崩して膝をつく。

…いったい何があったのか。

混乱する頭。

数秒して、ようやく目の前のことが理解できた。

「メリー号が…真っ二つに……」

「おいっ、何だ! どうしたんだ急に!」

「…急にも何も、これが当然なんじゃねぇのか?」

「え…」

「メリーは、もう二度と走れねぇと断定された船だ…」

ルフィが慌てて、メリーの頭まで駆け登り、アイスバーグたちに訴えた。

「おっさんっヤベェ! メリー号がヤベェよ! 何とかしてくれ! 〜っオメェらちょうどよかった! みんな船大工だろ!? 何とかしてくれよ! ずっと一緒に旅してきた仲間なんだ! さっきも、コイツに救われたばかりだ! だから頼むよ! おっさん!」

大工たちは絶句し、チラリチラリとアイスバーグを見る。

アイスバーグは黙って両腕を組み、メリーを見下ろした。

ティオはゾロの服の端を掴み、俯く。

その仕草で察したのか、ゾロは目を閉じた。

アイスバーグが低い声で告げる。



「…もう、眠らせてやれ」



ルフィは言葉を失った。

アイスバーグは眉間にしわを寄せ、続ける。

「…アクアラグナの迫る中、その船は廃船島で、俺を呼んだんだ。まだ走りてぇってな。だから、やれるだけの手は尽くした。…俺は今、奇跡を見てる。もう限界なんかとうに越えてる、船の軌跡を。長年船大工をやって来たが、俺はここまで凄い海賊船を見たことが無い。…見事な生き様だった」

ルフィは目を見開き、固まっていた。

頭の中を巡るのは、メリー号と出会ってから今までの、全ての出来事。

…そして、守らなければならない仲間たち、ひとりひとりの顔。

「……」

もう、ルフィに迷いはなかった。

表情からそれを読み取ったアイスバーグは、近場の大工に指示する。

「…小舟を何隻か出してやれ」

「あ、はい!」

大工たちが数人、小舟を降ろしに行った。

 
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