シザンサス

□23,涙の別れと海軍の英雄
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ウォーターセブンへ帰る道すがら。

麦わら一味はすっかりいつもの航海気分を取り戻していた。

「おい! おいおいおいウソップ〜っ!」

「どこに居るんだよウソップ〜!」

動けないルフィをチョッパーが担ぎ、2人して甲板で大声を張り上げる。

先ほどから、今まで一緒に居たはずのウソップが見当たらないのだ。

サンジがタバコに火をつけつつ"そげキング"に言う。

「…おら、呼んでるぞ」

そげキングは身を縮め、ひたすら青ざめていた。

「いや……我にかえってみると…あの…」

「いい加減出てこいウソップ! 出てこねぇとぶっ飛ばすぞ!」

「ぶっ飛ばすぞォ!」


フンッと鼻を鳴らしたルフィは、あ、そうだと思いついたように振り返る。

「なぁ、ウソップ知らねぇか? そげキング」

「ギクッ」

「どこにもいねぇんだよアイツ〜」

「あ、あぁ、安心したまえ! 彼ならさっき、小舟で先に帰った!」

「「えぇ〜っ!?」」

"ドカッ"

サンジがそげキングの頭に蹴りを入れた。

ルフィとチョッパーは相変わらず目を見開いている。

「何でだァ!?」

「今この船、アイツのモンなのに!」

ゾロとティオが半目でルフィたちを見た。

「アイツら一体、何をもってウソップと認識してんだ…?」

「…さぁ」

その頃ナミは、メリー号の船室という船室を全て見て回っていた。

「…ここも、か。…いったいどういうことなのかしら…」

顎に手を当てて船首の方へ戻ってくる。

「やっぱり、誰もどこにも乗ってないわ…」

サンジがタバコの煙を吹く。

「そりゃ変だな…。あのとき縄梯子(なわばしご)を降ろしてくれた奴がいるはずなんだが…」

「…この船、いったい誰が…」

話を聞いていたルフィが、眉間にしわを寄せる。

「あのなぁ、アホかオメェら!」

「「「?」」」

「あんとき、俺らを呼ぶ声が聞こえたろ!? ありゃぁ間違いなく、メリー号の声だ! なぁメリー! 喋ってみろって!」


…甲板が、静まり返る。


「あのなぁルフィ、物は喋らねぇんだよ」

「けど、ティオはメリーとも喋れるじゃねぇか!」

「ん、あぁ、そういやそうか…」

「なぁティオ! メリーは喋るよなぁ!?」

「(コクン)」

「ほら見ろ!」

「せいかくに、いうと、せかいじゅう、ばんぶつ、なにもかも、こえ、はっしてる」

チョッパーがルフィを担いだまま、首をかしげる。

「でも、俺には聞こえねーぞ? 前に、修行が必要って言ってたよな?」

「(コクン) …でも、ものの、こえまで、きくには、さいのう、ひつよう」

ナミが顎に手を当てた。

「つまり、いくら頑張っても聞こえない人は一生聞こえないのね?」

「(コクン)」

「んなぁティオ〜、俺にもメリーの声聞こえるようにしてくれぇ〜!」

「むり」

「えぇ〜っ?」

「アホかクソゴム。才能と修行が必要だってティオちゃんが言ったばっかりだろうが」

「でもよ〜、あの時は聞こえたじゃんかぁ」

「だァから…」


…ぬる〜い口喧嘩が続く。

穏やかな波に穏やかな風。

航海はすこぶる快調だった。

 
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