シザンサス

□23,涙の別れと海軍の英雄
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…燃え盛るエニエス・ロビー。

数年ぶりのバスターコールの結果を、クザンはじっと見つめていた。


"ぷるぷるぷるぷるぷる…"


懐の子電伝虫で、近場の軍艦にかける。

"ガチャ"

『はい、こちら第七部隊!』

「あー、お疲れさん。俺だけど」

『んなっ、大将青キジ殿!? い、いらしていたとは……っ、ま、まだっ、追いますので! とてもこのままでは終われない! …我々海軍の、いや、世界政府の威信にかけてでもっ、麦わら海賊団を仕留め、必ずや、最重要犯罪人、ニコ・ロビンと、世界政府及び海軍出奔者、元・元帥付き諜報員ティオを、連行する所存であります! つきましては、艦隊の増援と、海兵の補充を「もういい」

ピシャリと言い放つと、子電伝虫がビクっと身を震わせた。

「国家級戦力バスターコールをもってして、この艦隊の失態と、法の象徴であるこのエニエス・ロビーの有様を見れば、もはや一目瞭然。…この一件は、我々の完敗だ。各艦、負傷した海兵たちを回収し、速やかに海軍本部へ帰投しろ」

『はっ、了解致しました!』


"ガチャ"


切れた子電伝虫を、再び懐に仕舞う。

クザンは自転車を漕ぎ出しながら、頭を掻いた。

「…まさかお前との賭けに負けるとはなァ」

思い浮かぶのは、覚悟の炎を灯した青い瞳。

…いつの間に、あんな目が出来るようになったのだろう。

麦わら一味と出会って、いったい何を経験したのだろう。

海兵が海賊落ちするなんて褒められたものではないが、クザンは緩む頬を止められなかった。

「…親っつーのは、こんな気持ちになんのかねぇ…」

爆炎の立ち込めていた領域を抜けると、青い空が顔を出した。

クザンは、妙に清々しい気持ちで海を渡っていった。







同じ青空の下、軍艦を振り切ったメリー号では…

「この羊の頭の上でいいのかい?」

「あぁ。ここが俺の席だ」

「そうかい。…ぁよっこらしょっと。落ちるんじゃないよ?」

「ありがとな、怪獣のばーさん」

特等席であるメリーの頭に乗せてもらった、ルフィ。

まだ上手く動かない体だが、めいっぱい腕を広げてメリーに抱きつく。

「ありがとう、メリー。お前のおかげで脱出できた…。まさかメリーが来てくれるとは思わなかったけど、考えてみりゃ、俺たちはいつだってお前に守られて来たんだ。お前が仲間で本当に良かったよ。……ありがとうな、メリー」

甲板に集まった仲間たちは、ルフィの言動をじっと見守る。

…やがて、フランキーが言った。

「しっかしオメェら、とんでもねぇことしちまったぞ? 大体なァ、世界政府の旗を撃ち抜くなんざ…」

「なぁに、大したことじゃねぇ。俺たちはただ、奪られた仲間を取り返しただけだ。お前も協力してくれてありがとな、フランキー」

「なっ、いや……お、俺様にとっちゃ、大したことじゃなかったけどな! は、ははっ」

ルフィはメリーの上で、満面の笑みを浮かべて拳を突き上げる。

「とにかくだ! この喧嘩、俺たちの……勝ちだぁぁぁっ!!」

「「「おーっ!」」」


青空に向かっていくつも突き上げられる拳。

…あの世界政府から、あのCP9から、仲間を取り戻した。

達成感による喜びが、これでもかと弾ける。

それを感じてか、麦わら帽子をかぶった海賊旗が、青空を背景にいつもより激しくはためいていた。

 
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