シザンサス

□22,バスターコール
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ところ変わって、正義の門前に停められた護送船。


「「「うわああああああ!!」」」


"ザパァ〜ンッ!"


乗っていた海兵たちが全員、海へと突き落された。

「はっはっはっはっ! 悪りぃな、海兵諸君。この船は脱出に使わせてもらう!」

フランキーは煙を上げる左手を、ふっと吹いた。

その背後には、凛と立つロビン。

「さて、護送船改め、脱出船の強奪完了だ」

「えぇ」

「あとは、麦わらたちを待つのみ」

「そうね。……? 何かしら…」

ロビンは突然、海へと視線を移した。

ゴボゴボと不自然な泡が立ち、何か大きな影が水面に浮かび上がる。

「…何だ?」

フランキーも気づいたのか、欄干に寄って海を覗き込んだ。

すると…


"ゴボボボ……ザパァンッ!"


「死ぬんじゃないよ〜!」



海の中からココロが飛び出てきた。

「んなっ、ココロのババァ!?」

何だか、フランキーがこの十数年見てきた姿と違う…

ココロは持っていた細長い布を翻した。


"ドゴゴゴッ!"


中に包まれていた麦わら一味が、甲板に墜落する。

「お〜いオメェら、意識を戻しな」

声を掛けられ、頬を叩かれ。

1人、また1人と咳き込み始めた。

「が…ぁっ」

「ぅ、げほっげほっ」

「ひ……がは、ぁっ」

フランキーは信じられないものを見る目で、一味を見渡した。

「奇跡としか言いようがねぇ。…全員、何かとんでもねぇショックでも受けて仮死状態にあったからか、あまり水を飲まずに済んでいやがる…」

「んがががががっ、よかったねぇそりゃぁ。けど、仮死になるほどのショックってのは、いったい何だろうねぇ」

「オメーだ、ババァ」

ココロはフランキーを無視し、ロビンの方を向く。

「おや、お前だね? 麦わら小僧の助けたがってた仲間は。シフトステーションで初めて会ったときゃぁ、まさかこんなこと仕出かすなんて思いもしなかった」

話しながら、テキトーに服を着始めた。

「服をちゃんと着てから喋れババァ!」

再びフランキーを無視し、ココロは続ける。

「海賊王になるなんざ笑っちまったが、案外本当かもしれないねぇ、んががががっ」

そこでようやく、一味が目を覚ました。

「ぶはっ、げほっげほっ、生ぎでだ〜…」

「ごほっ…ナミさんとティオちゃんは無事なのか…?」

「あ"〜酷い目に遭った…」

フランキーがドン引きする。

「…相変わらず丈夫な奴らだぜ」

起き上がったゾロは、傍で丸くなっているティオを揺さぶった。

「おい、起きろ」

「ん……ぅ……けほっ、けほ………ぞろ?」

「あぁ」

「…なんか…へんなの、みた、き、する…」

「…言うな。思い出したくねぇ」


「んがががっ、本当にオメェら、よく生きてたもんら」


「「「!」」」


ココロの声を聞いた瞬間、全員肩を揺らし、そげキングに至ってはこれでもかと目を飛び出させた。

「あああああああ!! 現実だったぁぁぁ! 人魚はやっぱりいねぇんだ! 全部ジュゴンだったんだぁぁぁぁ! うわあああああ!!」

「馬鹿野郎! まだ本人が人魚だなんて言ってねぇだろ! 男の夢を諦めんな!」

そう豪語したサンジだったが…

「あたしゃ白魚(しらうお)の人魚らよ?」

「やめろぉぉぉぉ!!」

頭を抱えて叫ぶ羽目になった。

だんだん冷静になってきたそげキングが、首をかしげる。

「けどよ、足のある人魚なんて聞いたことねぇぞ?」

「ひれ、あしに、なるの」

「ん、ティオ?」

「にんぎょ、30さい、くらいから、ひれ、ふたまた、なって、あるけるように、なる」

「ほ〜、よく知ってるねぇ。ま、おめぇらも魚人島へ行けば分かるさ。んがががががっ」

「二股……あ、そうか! 100年生きた猫は尻尾が二股に分かれて妖怪化するって言うぞ」

「あぁ、化け猫か」

人魚ではなく妖怪だと認識することで、サンジはケロリと立ち直った。

「妖怪と一緒にするんじゃないよ、失礼な奴ららねぇ。礼の一つも言ったらどうだい?」

「「「ココロさんどーもありがとー」」」

「んががががっ、分かりゃいいんらよ」


…さて、一段落ついたところで、サンジはロビンに目を向けた。

もちろん、ハート型の目を。

「あはっ、ロビンちゅ「「ロビン!」」

抱きつこうと飛び出したサンジだったが、ナミとチョッパーに先を越された。

"バキッ"

勢い余って船のマストに突っ込む。

「間に合ってよかったロビン! 無事だったのねぇ!」

「うわぁぁぁぁん!」

涙でぐしょぐしょになりながら抱きついてくる2人に、ロビンは微笑みかける。

「えぇ。おかげさまで。ありがとう」

「うわぁぁぁん! いいのよもう〜!」

「そうだぞチクショォォォ!」

"ドサッ"

「へ、あれ?」

「チョッパー?」

「どうしたの?」

ナミにくっついていたチョッパーが、突然床に落ちた。

「おかしいな。俺、体が動かねぇ…」

ゾロが腕を組み、言う。

「だろうな。…ま、全部終わったら話してやるよ。今はそこで休んでろ」

そして、ひとり、さっきまでロビンたちがいた橋へと歩き始めた。

その肩にはいつの間にか、鼬になったティオが乗っている。

「お、おい、ゾロ、ティオ!」

慌ててそげキングが追った。

「…あれを見ろ」

「へ? 見ろって何を―――」

言われるままに前方を見たそげキングは、あまりの光景に固まった。

「んなっ……エニエス・ロビーが…」

裁判所から向こうが全て燃えている。

空は煙で黒く曇っていた。

 
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