シザンサス

□21,ゾロVSカク
5ページ/13ページ



カクを中心に円状に繰り出された斬撃が、司法の塔を横一文字に両断した。

"ズゴゴッ…"

塔がズレる。

土煙が舞う中、ゾロは敵を見据えて立ち上がった。

(…なるほど、長さ、つまりリーチか。遠心力にあの巨体の持つパワーも合わさって、切れ味がより深く鋭くなってやがる)

警戒心を強めるゾロの横で、そげキングが起き上がる。

「…ぃてて……ん? おい何だよ、何も壊れてねぇじゃねぇか」

「…ばーか、天井見てみろ」

「へ? 天井って、わぁ〜綺麗な青空〜…ってえええええっ!? まさかこの司法の塔が切れてんのか!?」

ティオは土煙にむせながらも、むっくり体を起こした。

カクならこのくらいやるだろうと思っていたのか、驚いてはいない。

ゾロがニヤリと口元を歪めた。

「フン、いくら切れ味が鋭いからといって、そんなモン、何の脅しにもなりゃしねぇ」

そして、刀を構えようと右腕を動かしたところ…


"ガシャン"


「ぃてててててっやめろゾロ何すんだ! 何で引っ張んだよ!」

「あ?」

そげキングが目を剥いて突っかかって来た。

…嫌な予感が2人の脳裏を駆け抜ける。

「え、あれ…引っ張、る…?」

「まさか…」

ゾロは右手を、そげキングは左手を上げた。


「「ぬぁにぃぃぃっ!?」」


ガッチリと2人の手首を繋いだ、海楼石の手錠。

「う〜わ…ガッチリ……」

「そうだな……って、何やってんだテメェはぁぁっ!」

「俺のせーじゃねぇでしょうがぁっ!」



「……ばか?」

ティオは半目で2人を見つめた。

「ゾロがいきなり突進してくるからこうなったんだろうが!」

「そりゃさっきの攻撃でテメェがボーっと突っ立ってやがるからだ! いいから外せよこの手錠!」

「ンなこと出来たらそもそもロビンとティオの錠の鍵なんて奪りに来ねぇよ! …つまり、この手錠を外すにも、CP9を倒す必要があるということだ!」

「何を誇らし気に言ってんだ! こんな状態で戦えるわけねぇだろうが!」

喧嘩する2人を、唖然と見つめる、敵2人。

「何やっとるんじゃ? アイツら」

「さぁな。…獲物が繋がっちまったぜ」

「繋がろうがどうなろうが変わらん。二人共わしが片付けるから、お前は退がっとれ、ジャブラ」

「ぁあ!? 貴様、人の獲物を横取りしようってのか!?」

敵もまた喧嘩を始める。

緊張感のまるでない戦場を見つめ、ティオが声を張った。

「てじょうの、ばんごう、みて」

4人の目が、一斉にティオに向く。

「てじょう、ぜんぶで、5つ。それぞれ、ばんごう、ついてる」

「そうなのか?」

そげキングが手錠を隅々まで見回すと、確かにあった、番号が。

「2番って書いてあるぞ」

どうすりゃいい? と投げられた視線を受け取ったティオは、その視線をそのままカクとジャブラへ投げ渡す。

2人はティオの言わんとすることを察し、自分たちの持つ手錠の鍵を取り出した。

「俺ァ1番だ。残念だったな」

「わしもハズレじゃ。5番じゃからな」

「マジかよ〜…ちょっと期待したのに…」

そげキングは目に見えて項垂れる。

「んじゃぁ他のCP9が持ってるってことかぁ……()りに行けるわけがねぇ…」

目の前の敵2人が、このままみすみす逃がしてくれるわけないのだから。

「うっし、先に倒したモン勝ちでどうだ?」

「いいじゃろう」

カクとジャブラは同時に踏み込み、ゾロとそげキングに襲い掛かった。

「ひえぇえぇえぇえぇぇぇぇっ!」

「くそっ」

逃げるしかない2人。

走りながら、そげキングはティオに訊いた。

「ぅぉおいティオ〜! 何かいい方法ねぇのかぁ〜!」

「いまの、じょうきょうだと、かぎ、てにいれる、しか、ない…」

「うわぁ〜んっ、マジかよ〜っ!」

と、そこに…

「あれ? ゾロ、そげキング…?」

チョッパーが現れた。

「ん? ぅおっ、ティオもいたのか!?」

「…ちょっぱー」

扉の影で、壁際に座ったティオに気づいたチョッパーは、驚いたのも束の間、すぐに険しい表情になった。

「足が血だらけじゃないか! …左足の骨も折れてるっ、大変だ!」

チョッパーはリュックを探りながら、ティオの傍に膝をつく。

「CP9の奴らにやられたのか?」

「(コクン)」

「くそっ、何でだ……ティオには手ぇ出さないと思ってたのにっ」

「だいじ、なのは、あたま、と、て。あし、いらない、から」

…そう、ゾロが間に合わなかったら、危うく切り落とされるところだったのだ。

チョッパーはテキパキと治療を進めていく。

「…よし、とりあえず応急処置はしたから。帰ったらちゃんと治療しよう」

「(コクン)…ありが、と」

「きっと貧血気味だから、あんまり動かないようにな」

「わか、た」

「…ところで……」

「?」

チョッパーは半目でゾロとそげキングを見つめた。

「2人は何で一緒に走ってるんだ?」

ティオも半目になり、ため息をつく。

「そげきんぐ、まちがえて、ぞろに、かいろうせきの、てじょう、はめた。そのあと、そげきんぐも、はまって、ふたりのて、つながったまま、とれなくなった」

「ぇええっ!?」

「2ばんの、かぎ、あれば、てじょう、かいじょ、できる」

「手錠と鍵って番号振ってあるのか?」

「(コクン)」

そこで、ゾロとそげキングがチョッパーに気づいた。

「おっ、チョッパーか!?」

「いいところに来た!」

「「2番の鍵持ってきてくれ!」」

「え、ぁ、おう…」

チョッパーは戸惑い気味に立ち上がる。

「それより、俺がそいつらと戦った方がいいんじゃ…」

「馬鹿言えっ、相手は2人だぞ! もしお前が負けたら、俺たちはこのまま手も足も出せずにやられちまう!」

「サンジ、ナミ、フランキー、誰かが2番の鍵を持った奴のところにいるはずなんだ! 何とか2番の鍵を見つけてきてくれ、頼む! お前は俺たちの希望だ!」

「き、希望……んなこと言われても、嬉しかねぇぞコノヤロがぁ!」

「「照れてねぇでさっさと行けぇ!」」

「えっ、あ、おう、分かった。…えーと、一番早く手に入りそうなのは…サンジかな?」

「ちがう」

「え?」

チョッパーはティオを見下ろした。

ティオは目を細め、覇気で読み取った状況か推測する。

「さんじくんの、あいて、おんなのひと」

「えっ、ってことは…」

「(コクン)…ちょっと、じかん、かかるかも。…それより、かぎ、うばうこと、だけなら、なみちゃんの、ほうが、はやい」

泥棒猫の異名を持つほど、盗みが得意で逃げ足も速いナミのことだ。

ハナから戦う気はないだろう。

覇気で観測される動きからも、ナミがクマドリから逃げている様子が伺える。

「ちょっぱー、なみちゃん、とこ、いって。てつだって、あげて」

「ナミはピンチなのか!?」

「いまは、だいじょぶ。…でも、CP9から、にげるの、むずかしい…」

「分かった! とりあえず先にナミのとこに行くよ!」

「(コクン)…なみちゃん、いま、うえの、かいに、いる」

「上だなっ、よーし!」

チョッパーは人獣型からトナカイに姿を変えて、駆け出していった。

ティオはその背中を見送ってから、ゾロとそげキングの方に視線を戻す。

クマドリが2番の鍵を持っていることを祈るばかりだ。

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ