シザンサス

□17,ウォーターセブン
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"ザザァー……ザザァー……"


どれくらい経っただろうか。

メリー号は打ち寄せる波の音が響くだけで、いたって静かだった。

ゾロとティオは変わらず昼寝したまま動いていない。

……そこへ。


"カタン……ガサッ、ゴソッ"


小さな物音が響いた。

メリー号の甲板に10人ほどの男たちが上がってくる。

みんな珍妙な恰好をして、黒いレンズのゴーグルをしていた。

男たちはゾロとティオをぐるりと囲む。

"カチャ……カチャ、ガチャ……"

1人、また1人と、皆一様に武器を構え始めた。

そして、アイコンタクトでタイミングを合わせ、振りかぶる。


"ヒュッ……"



―――しかし。



"ガキンッ"


振り下ろされた武器は刀で受け止められた。

ゾロの目がゆっくりと開き、鋭い眼光で"敵"を見渡す。

ティオも片目だけ開いた。

"敵"は皆、ゴーグルの黒いレンズの向こうでニヤリと笑う。

「寝込みを襲ったはずだったんだがなぁ」

「……誰だテメェら」

ティオが、のっそりとゾロの隣へ抜け出しながら言う。

「うぉーたーせぶん、うらのかお。しょうきんかせぎ、けん、かいたいや、ふらんきーいっか」

半目でぺたりと甲板に座る態度が、相手は雑魚だからゾロ一人で十分だと告げている。

ゾロは立てかけていた残り二本の刀を腰に差し、立ち上がった。

"敵"は構えていた武器を一度収め、ゾロと距離を置く。

「よく知ってんじゃねぇかお嬢ちゃん」

「俺たちゃ泣く子も黙る賞金稼ぎ、フランキー一家!」

「懸賞金6000万ベリー、海賊狩りのゾロ、テメェの首をいただく!」

「そして船内に待ち伏せて、一味全員一網打尽!」

「こんなデカい獲物に出会えるなんざ、俺たちゃラッキーだぜ!」

「一斉にかかれ、テメェらぁぁ!」

「「「うおおおおおおっ!」」」




"――――――ガキンッ"




フランキー一家全員が繰り出した渾身の一振りは、容易くゾロに受け止められた。

その上、1ミリも動かせない。

「コ、コイツっ……」

彼らはゾロとの実力差に、やっと気づいた。

ゾロの真っ黒い笑みに冷や汗をかき始める。

「いや、あの、えーと……」

「……ラッキー? アンラッキーの間違いじゃねぇか?」

低い声でそう言って、ゾロは刀を二本抜く。



「二刀流―――


 ―――犀回(サイクル)!」



「「ぎゃああああっ!!」」




フランキー一家は綺麗に吹っ飛んで、海に落ちた。

「フン……くだらねぇ」

刀を収めたゾロは、ぺったり座ってこっくりこっくり舟をこぐティオの横に座る。

「ぅ……おわ、た?」

「あぁ」

ティオは再びゾロの膝の間へ滑り込んだ。

「お前、俺にやらせて逃げたな?」

「………すぅ、すぅ」

「狸寝入り決め込んでんじゃねぇよ」

「うる、さい」

"ドスッ"

「んぎ……っ」

ゾロの太腿に、ティオのごく軽い指銃(シガン)が決まる。

普通に押すだけでも痛いツボを強打され、さすがのゾロもジ〜ンと来た。

「て、めっ……」

「…………すぅ……すぅ……」

文句を言おうとするも、時すでに遅し。

今度は本当に寝てしまったようだ。

「〜〜〜っ…………はぁ……」

こめかみに血管を浮かせたゾロだったが、結局、諦めて寝ることにした。

 
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