シザンサス

□15,海軍本部大将青キジ
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数日後。

麦わら一味はログポースに従って航路を進んでいた。

天気は快晴。

敵もない。

デービーバックファイトで受けた傷も癒えている。

……しかし。

「……ふぅ……ふぅ……っ」

ティオは寝込んでいた。

風邪を引いてしまったらしい。

意識はなく、荒い呼吸を繰り返している。


"ガチャ"


「チョッパー、ティオの様子はどう?」

「あぁ、ナミ。……まだ熱が下がらねぇんだ。薬は飲ませたけど、元から体が弱いだけあって回復が遅いみたいで……」

ナミは紅潮しているティオの頬を撫でた。

じんわりと掌に熱が伝わる。

「傷の治りも遅いって言ってたわね。体が弱い原因って、病気か何かなの?」

「さぁ……。俺も、ティオが自分で体が弱いって言ってたのを聞いただけだから、詳しくは分かんねぇんだ。診察した限りだと、特に大きな病気を抱えてる様子もないんだけど……」

「そう……。まぁ、治ってから本人に訊くしかないわね」

と、そこに……

「野郎共! 島が見えたぞ〜!」

見張り台からウソップの声が聞こえてきた。

続いてルフィの声も。

「碇の準備だぁ! 上陸するぞ〜!」




しばらくすると船は海岸につけられ、みんな続々と上陸していった。

寝込んでいるティオと、看病しているチョッパーは船に残っている。

「ここから見る限りだと、無人島みたいね」

ナミは辺りを見渡し、耳を澄ませた。

森には人の手が入った様子はない。

サンジがタバコの煙を吹きつつ、太陽の位置を見る。

「そろそろ昼だな。せっかくだしバーベキューにすっか」

「よっしゃあ! 宴だぁぁ!」

「って俺たちはいいけどよ、ティオはどうすんだ? 船から降りることも出来ねぇだろ」

「ティオちゃんの分は別で作るさ。チョッパーに頼まれてる」

「へぇ、そっか」

「つーわけで、みんな食材探してきてくれ」

「「「おう!」」」

「いーい? ネズミとカエルは却下よ!」

「我が儘な奴だなぁ。腹に入りゃ同じだろうg"ゴチンッ"

ゾロはナミに殴られた。





しばらくして、海岸で火を焚くサンジの元にみんなが帰って来る。

「お〜いサンジ! 魚や貝に果物大量だぜ!」

「ご苦労さん」

サンジは食材を受け取り調理していく。

その間に、ロビンが本を取りに行きがてら、チョッパーを呼びに行った。


"ガチャ"


「船医さん」

「ん? あぁ、ロビン」

「ティオはまだ起きられそうにない?」

「……うん。サンジに病理食頼んだけど、昼飯もちょっと無理そうだ」

「そう……。今、コックさんが海岸でバーベキューの準備をしてくれてるわ。ティオには悪いけど、食べに行きましょう?」

「……そうだな」

ロビンとチョッパーは今一度ティオを見てから、静かに船室を出て行った。

2人が船を降りてくると、ちょうど飲み物の入ったジョッキを回しているところだった。

2人も輪に加わり、ジョッキを受け取る。

「それじゃ、お疲れさん」

「「「かんぱ〜い!」」」

早速と言うようにルフィが肉に手を伸ばす。

「モグモグ……うんめぇなこれぇ!」

「こらルフィ、あんまりがっつくな」

「さっき繋ぎだとか言って散々つまみ食いしてたクセによく入るな」

「ングング……まだまだイケるぉ!」

チョッパーは食べながら、1人で本を読み続けるロビンに目をやる。

「ロビン、早く食べないとルフィに全部食べられちゃうぞ?」

「えぇ。もう少しで読み終わるから」

「ダメだ! 本ばっかり読んでると虫になっちゃうぞ! 本の虫って言うだろ?」

「あら、ふふふっ」



いつも通り賑やかに、昼食は終わった。

「こりゃ、もう1回食材探しに行かねぇと備蓄は出来ねぇな」

「俺も薬草とか探しに行きたいな。ティオにいっぱい使っちゃったから解熱剤がもうないんだ」

というわけで、備蓄用の食材や薬草を採るために、みんなでもう一度森へ入ることになった。

「お、チョッパー! 確かこれも薬になるんだったよな?」

「うん。ありがとな、ウソップ」

「ちょっとゾロ! 変なのばっか捕まえてこないでよ! ルフィも!」

「ぁあ? これもダメなのか? 下手物ほど美味いって言うだろ」

「おう! ウマそだぞー!」

「こんのバカコンビ!」

"ゴツン!"


ゾロとルフィはナミに殴られた。

「そういえばさ、この道の間に続いてる細い溝は何なんだろ」

チョッパーが足元を見ると、ウソップも足元を見下ろした。

「あぁ、そういや何だろうな。森の入り口辺りからずっと続いてる。まるで自転車でも通ったみてぇだな」

それを聞いてサンジが首をかしげる。

「おいおい、ここは無人島だろ? 人がいねぇのに自転車が通るわけねぇだろ」

「ははっ、それもそうだよな!」

笑い飛ばすウソップの横で、ロビンは妙に真剣な目でその溝を見つめていた。

「……」

何か思い当たる節があるようだが……

「おっ、森を抜けるぞ?」

ルフィの間抜けた声で、全員の目が前方に向く。

少し歩くと、開けたところに出た。

見渡す限りの草原に、大きな岩がポツンとあるだけ。

「あーっ!」

いきなりチョッパーが叫んだ。

「んぉ? どうしたチョッパー」

チョッパーは真っ直ぐに、大きな岩へと走っていく。

見れば、岩のてっぺんに何かがあった。

ルフィが叫ぶ。

「あーっ、チョッパーの奴、あのデカいキノコを独り占めする気だな!? そうはさせるか!」

「お、おい待てよルフィ!」

ウソップが止めるのも聞かず、ルフィは走っていってしまう。

先に走っていったチョッパーは、岩の裏へ回り込んだ。

そこで……


"ボフッ"


「うわぁ」


何かにぶつかったようで、反動で後ろへ転がる。

「どうしたチョッパー!」

「何かあったみてぇだ……行くぞ!」

ルフィ・ゾロ・サンジが、チョッパーの元へ走り寄る。

「イテテテ……ん? 何だコレ」

チョッパーはぶつかったものを見上げ、首をかしげた。

「すか〜……すか〜……」

立ったまま寝息を立てている、長身の男。

「……すか〜……ん、ぁあ?」

男は目が覚めたのか、アイマスクを外してチョッパーを見下ろした。

「あー……タヌキ?」

「んなっ、トナカイだ! ほら、角!」

「大丈夫かっ、チョッパー! ……ん、ん? 何だコイツ」

「何があった!?」

「おいどうした! ルフィ!?」

男は気だるげにルフィを見る。

「んー……? 何だ、お前ら」

「オメェが何だ!」

そこに少し遅れて、ウソップ・ナミ・ロビンもやって来る。

「な、何だ? あのデカい奴……」

「!?」


"―――ドサッ"


突然、ロビンがその場に座り込んだ。

不思議に思ったみんなの視線が、一気にロビンに向く。

「どうしたっ、ロビンちゃん!?」

ロビンは青ざめた顔で、荒い呼吸で肩を上下させている。

……この男が原因なのか?

一味は全員、敵意に満ちた眼差しを男に向けた。

「あららら〜? まぁそう殺気立つなよ、兄ちゃん達。別に指令で来たわけじゃねぇんだ。天気がいいんで、散歩がてらにな」

ゾロが刀の鍔を弾く。

「……指令だと? 何の組織だ」

ロビンが静かに答える。

「……海兵よ。……それも、世界政府の最高戦力と呼ばれる」

「は? コイツが?」

「……えぇ。海軍本部"大将"青雉」

クザンはニヤリと笑った。

「あららら〜、こりゃ、イイ女になったな、ニコ・ロビン」

サンジがタバコを噛み締めて問う。

「大将って……どんだけ偉い奴なんだよ」

「海軍において、大将の肩書を持つ者は、わずか3人。赤犬、青雉、黄猿。その3人の上には、海軍トップのセンゴク元帥が君臨するだけ。文字通り、その男は世界政府の最高戦力の1人よ」

それを聞いて、ウソップがゾロの影に隠れながらも叫ぶ。

「なっ、何でそんな強い奴がこんなとこにいんだよ! もっと何億とかいう大海賊を相手にすりゃいいだろうが! ど、どっか行け…ぇ」

尻すぼみになっていく叫び。

それを聞き流して、クザンはナミに目を向けた。

「あららら〜?」

「っ……な、何よ……」

ナミは青ざめて固まった。

 
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