アゲラタム

□第一巻
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4、白澤


あの世絶景百選の一つ、桃源郷。

「誘ってくれてありがとう! 鬼灯様!」

鬼灯の足元で、シロがぴょんぴょん跳ね回った。

「ちょうど何件か用事もありましたから、ついでです」

「桃太郎元気かな〜」

「以前様子を見に伺ったときは、元気でやっていましたよ。天職だと感謝されました」

椿は辺りを見渡して満足げな顔をする。

「久々に見たけど、やっぱ綺麗なとこだな。昔からあんま変わってねーし」

「でしょうね。地獄と違い、天国は初めから完成された場所ですから。改善する場所なんてそもそもありません」

「薺の奴、元気でやってっかな。あの色魔に泣かされてなきゃいいけど」

「あの時以来会ってないんでしたっけ?」

「あぁ。ざっと800年ぶりになるな」

「ご本人は、毎日いたって楽しそうに薬を作ってますよ」

「"ご本人は"って何だよ、なんか気になる言い方だな」

……今日は、椿が休みで、鬼灯も午前のみ仕事が入っていた。

午後、鬼灯が注文した薬を取りに『極楽満月』へ行くついでに、椿は薺に、不喜処トリオは桃太郎に会うため、一緒に行くことになったのだ。


話しながら歩くうち、一行は少し小高い丘の上にやってくる。

眼下の絶景に、三匹が目を輝かせた。

「わぁ! さすが観光名所!」

「建物は中華風だな…」

「ここは日本と中国の境にあるので、双方の交易の場にもなっています」

「へぇー。じゃあ小籠包食べ放題?」

「……何で中国=小籠包食べ放題になるんですか。そんな場所に椿さんを連れていくわけないでしょう。赤字になるお店がかわいそうです」

「あ、そっか」

「おいお前ら、さらっと失礼なこと言ってんじゃねぇぞ」

 
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