シザンサス

□11,空島最終決戦
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ツルが弾け、ワイパーは反動で気を失い、下層へ落ちてゆく。

「?」

爆発音に気づいて、下層でゾロの介抱をしていたティオは、上を見上げた。

「……」

落ちてくるワイパーを見つけると、鳥に変わって上昇する。

「何じゃありゃ! 見た感じはインパクトっぽかったけど……」

「なんて力なの……」

「ワイパー! どうしよう! このまま落ちたらワイパーが死んじゃう!」

アイサは一目散に駆け出した。

しかし、ウソップに止められる。

「大丈夫だ。下にティオがいる。ゾロの時みたく何とかしてくれるはずだ!」

雲の縁から下層を覗き込むと、案の定、ティオがワイパーの体を島雲に落ちるよう押しやっていた。

「よしっ、俺たちは離れるぞ! もうすぐツルが倒れる! ここにいちゃ危ねぇ!」

ウソップはアイサを抱えて、ロビンたちの方へ戻ってくる。

その背後で、ジャイアントジャックはミシミシと唸り、西へ倒れ始めた。

「よっしゃあ倒れろ! 頼むぞルフィ、ナミ! 飛べよ! エネルのとこまで!」

ウソップが叫んだ瞬間、アッパーヤードへの雷が量を増した。

どうやら自分の元へ向かっているルフィとナミに気づき、エネルが雷を集中させているらしい。

とはいえ、あとはルフィとナミを信じて待つしかない。

黄金の鐘の音が鳴るその時まで。

「やべぇ! 下層が見えてきた! このままじゃ下層にも雷が届く!」

「あそこにはワイパーがいるんだよ!?」

「ゾロもだ! くそっ、頼むぞティオ! 何とかしてくれぇ!」

ウソップたちの願いが届いてか、ティオは下層で奮闘していた。

(たかいとこ、ひらいしんに、して、かみなり、よけるっ)

エネルが意図的に狙って落とさなければ、雷は高いところから順に落ちる。

ならば、より低いところにいればいいだけの話。

ティオはゾロを引きずって、一番安全であろう場所に運び、続いてワイパーも運ぼうとした。

しかし……

(どう、して……)

ワイパーは自分の足で立っていた。

見つめる先は、空。

もう身体は限界を超えているはずなのに。

「無駄だ、エネル。お前には落とせやしないさ。誇り高い戦士達の歴史を、どこにあろうと力強く生み出し育む、この雄大な力を。お前がどれだけの森を焼こうと、どれだけの遺跡を破壊しようと、大地は、決して負けない!」

「……」

ティオも一緒になって空を見上げた。

ルフィとナミが、今どこにいるか分かる。

もう少しだ。


「行けええぇぇぇぇぇぇっ!

 麦わらあああぁぁぁっ!」



ワイパーのその声は、届かない。

しかし"思い"は、何かの形となって届くはずだ。

「……あ」

ティオの覇気が感知した。

ルフィとナミが、ついにジャイアントジャックから飛び出したことを。

そしてルフィは、エネルの元ではなく、あの巨大な雷雲の塊へと突っ込んでいく。

ルフィの右手にくっついた黄金のせいか、雷雲の塊は異常な放電を始めた。

そして……



"ズドオオオォォォンッ!!"



雷雲の塊はアッパーヤードに届くことなく、割れた。

空が一瞬にして晴れ渡る。

「あお、ぞら……」

空島の、いつもの青空が、帰ってきた。

その晴れ空の中に、光るものが一つ。

「……る、ふぃ」

間違いない。

ルフィの右手の黄金が光っているのだ。

ティオは目を見開いてそれを見つめる。

自然と両手を胸の前で握っていた。

胸が詰まって息が苦しい。

心臓が痛いほど音を立てて脈打つ。

けれど、その感覚は何故か嫌ではなく、寧ろ心を掻き立てた。

「……なら、してっ……おうごんの、かね!」

ワイパーもルフィを認識し、今一度、空に向かって叫ぶ。


「鳴らせ! 麦わらぁっ!」




それから、ほんの数秒後―――
















"ゴオオォン…"
















―――響いた。




 
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