シザンサス

□11,空島最終決戦
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雷雲の塊はそのままエンジェル島へとまっすぐに落下していく。

そして……




"ズドオオオオオオォォォォォンッ!!"




大爆発を起こした。

ウソップがゴクリと唾を飲み込む。

「な、何だ今の爆発は……それに、まだ雷の雨は続くのか……? もう生きて帰れる気がしねぇよ……」

ガン・フォールが悔し気に拳を握る。

「エンジェル島を消しおったのかっ……なんと、なんという非道を……エネルっ!」

「おい! 早くメリー号へ行こうぜ! 死んじまうよ!」

「ダメだ」

「何でだよゾロ!」

「ルフィは、アイツは鐘を鳴らすまで戻ってこねぇよ」

「はぁ!?」

「確かにそんなこと、言っていたわね」

「(コクン)…さるやま、れんごうぐんに、おうごんきょう、そらに、あったと、つたえる、ため」

「アイツは、やると言ったらやる奴だ。ナミが止めたって聞きゃしねぇよ」

と、そこに……

「うおっ、危ねぇ! また何か落ちてくんぞ! 気ィつけろ!」

「あ?」

何かの影が差した。

ウソップの言葉に全員が空を見上げると、確かに何かが落ちてくる。

先ほどのツルの先端とは違い、ふわふわゆらゆらと。

正体が見えてくると、ティオは首を傾げた。

「はっぱ?」

落ちてきたのは、ジャイアントジャックの巨大な葉だった。

しかもよく見れば、ナミの字で何か書いてある。

ロビンがその文字を読んだ。

「『この巨大なツルを西へ切り倒せ』ですって」

「なに? ……って、そうすりゃどうなるってんだ?」

首を傾げるウソップに、ティオが推測を伝える。

「たぶん、あの、くもまで、いきたい」

「雲?」

ティオの指す方を見上げれば、何やらこじんまりとした島雲が浮かび、その横にエネルの船がつけられていた。

ということは、そこに鐘楼があるのだ。

「なるほど? あそこに向かって、そのバカでけぇツルを倒しゃいいってわけだ」

「(コクン)」

「って、ホントにやんのかよ!」

ウソップがムンクのような表情をしたそのとき、夜のように暗かった辺りが、急に明るく照らされた。

「んなっ、あれは、さっきの雷雲! しかもさっきの数倍デケェ!」

立ち込めていた黒い雷雲の一部がぽっかりと空いて、そこに先ほどと同様の丸い雷雲ができていた。

その規模からして、今度はスカイピア全土を吹き飛ばす気らしい。

「もう逃げ場がねぇっ」

「んじゃ、やるしかねぇな、ウソップ。倒すぞ、そのツル」

「んなっ、ゾロお前、いくらお前だってそんな無茶な!」

「じゃあお前、上行ってルフィ止めてこい」

「止まる奴かよ!」

「だろ? とにかく、無茶でも何でもやってもらうしかねぇ。ルフィがエネルの野郎を倒さなきゃ、ここもなくなっちまうんだ」

ゾロは刀を一本抜き、ジャイアントジャックへ向かって走り出した。

そして飛び込むような形で、ツルの片方を輪切りにする。


"ズバンッ!"


しかし……


"バチバチッ…ズドォンッ!"


「うぇえっ!? ゾローっ!」

エネルの差し金か。

ゾロに雷が落ちる。

ゾロはそのまま下層へと落ちていった。

「おいっ、下は遺跡だぞ! これ以上のダメージはさすがのゾロでも……」

「だいじょぶ」

「へ?」


"ボンッ"


ウソップの横をすり抜けて、鳥になったティオがゾロの元へ飛んでいった。

そして最大限の力でゾロの身体を押しやり、遺跡の合間に見える島雲に落ちるよう誘導する。


"ボフッ"


何とか、ゾロにこれ以上ダメージが加わることは避けられた。

「うおおおっよくやったティオー!」

……しかし、もう一つ問題がある。

「嘘でしょう……?」

「なっ、倒れねぇだと!?」

ゾロに輪切りにされたジャイアントジャックは、びくともせずに佇んでいた。

それを見て、ワイパーが立ち上がる。

「フン……ざまぁないぜ。よそモンが首突っ込むからだ」

「ワイパー無茶だよ!」

「黙ってろ。あの鐘は、カルガラの遺志を継ぐ俺たちが鳴らしてこそ、意味がある。……あの麦わらには何の関係があるというんだ」

「それは「あーあーほっとけロビン。あんな重傷マンに止められるもんか。今はあのツルを倒す方が先だ。上でルフィたちが待ってる。……とにかく、ゾロが半分切ってくれてるんだし、もう全体は傾きかけてるはずだ。俺様の火薬星の舞いを炸裂させることで、奴は大きな悲鳴と共になぎ倒されるのだ! やはりこの海賊団、俺様こそが砦なのだ! ロビン! お前は倒れた者どもを見ててくれ!」

自信たっぷりのウソップに言われ、ロビンが気を失っている負傷者の方へ振り返れば、爆風で上手いこと舞った葉によって、全員くるまれていた。

「かしわ餅ね」

「出動だ! うおおおおおおおっ!!」

ウソップはパチンコを手に、走っていってしまった。

ロビンはワイパーに視線を向ける。

「……400年前、青海でとある探検家が、黄金郷を見たと嘘をついた」

「?」

「世間は笑ったけれど、彼の子孫たちはその言葉を信じ、青海で、ずっとその黄金郷を探し続けている」

「!」

「黄金の鐘を鳴らせば、黄金郷は空にあったと伝えられる。麦わらのあの子はそう考えてるのよ。素敵な理由じゃない? ロマンがあって。……こんな状況なのにね。脱出のチャンスを棒に振ってまで。どうかしてるわ」

火薬星を連射するウソップを見ながら、ロビンはわずかに微笑んだ。

「そいつの、子孫の名は……?」

「モンブラン・クリケット」

「ならば、400年前の先祖の名は、ノーランドか」

「えぇ」

ロビンの答えを聞くと、ワイパーは歩き出した。

自分の目的と麦わらの目的が繋がった。

不本意だが、そう感じざるを得なかった。

もちろんアイサが止めるのも聞かない。

「くそっ、これでもダメか……よーし今度は三連火薬星で「どいてろ」

ウソップを押しのけて、ワイパーはジャイアントジャックに登った。

ゾロが斬った切り口の傍に、右手を押し当てる。

……これを倒せば、自分の代わりに麦わらが……

他人を頼るなんて、らしくない。

それでも、今はこれしか鐘を鳴らす方法がない。

ここに至るまでに犠牲になった仲間や、シャンディアの先祖の分も……


「リジェクトォォォッ!!」



"ズドオォンッ!"



雷に勝るとも劣らない、大地を揺るがすほどの爆発音が響いた。


 
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