シザンサス

□7,アッパーヤード
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「出た……」

ナミはため息混じりに座り込んだ。

見えてきたのは、巨大な樹木が立ち並ぶ森。

ロビンが前方を指さした。

「何かしら。空中に無数の道があるわ」

チョッパーも欄干によじ登って、前を見る。

「おぉ〜。あれも雲なのか?」

至る所に張り巡らされた、雲製と思しき道。

現在メリー号を運んでいるエビも、それに乗っている。

ティオがさも当然というように答えた。

「みるきーろーど。くもの、みち」

隣にゾロがやってくる。

「ふ〜ん。便利なもんだな」

「それもそうね。船に乗ったまま島の内部へ行けるもの」

「なに冷静に観察してんのよ! 内部へ行っちゃダメなんだったら!」

ナミが叫んでもエビは止まらない。

「お? また何か見えてきたぞ?」

チョッパーの言葉にみんなして前を向くと、何やら石造りの白い建造物が。

「あれは……祭壇かしら」

祭壇らしきそれには、既に火が灯され、生贄を待っていたかのようだ。


"ザバァッ……ドゴッ!"


「「「!」」」

凄まじい音がして、メリー号は祭壇の上に乗せられる。


"ザバァッ……"


メリー号をここまで運んできたエビは、そそくさと帰ってしまった。

「チッ、あのエビ野郎、俺たちを置き去りにしやがって」

「いったいどこなんだぁ、ここは……」

「いけにえの、さいだん」

ティオが言うと、ナミはさっと青ざめる。

「い、生贄……」

意味が分からないのか、チョッパーは首をかしげた。

「ナミ、イケニエってなんだ?」

「生きたまま神に供えられることよ」

「なんだ、そうか。生きたまま煮られるのかと思った」

チョッパーの束の間の安堵を、ロビンが突き崩す。

「でも、似たようなものよ?」

「えっ!?」

「いけにえ、かみさまに、いのち、ささげること」

「えええええええっ!? ってことはやっぱり俺たち殺されるのかっわっうわあああっ!」

メリー号の欄干に立っていたチョッパーは、叫んだ衝撃でバランスを崩し、船の下へ落ちる。

そのまま祭壇の階段を、一段ずつ転げ落ちていった。

「チョッパー!」

「ったく……」

素早く反応したゾロが、船から飛び降りて助けに行く。

階段の一番下にロビンが手を咲かせて、ひとまずチョッパーを受け止めた。

しかし……


"ザバァッ!"


「ぎゃあああああああっ!」



チョッパーの後ろで、青と黒の縞模様をした巨大なサメが、湖から姿を現した。


"ガキィンッ…"


チョッパーを食べようと向かってきていたサメを、ゾロが刀で防ぐ。

ゾロはそのまま、サメと一緒に湖へ飛び込んでいった。

「何アレ!」

「サメよ。空のサメ。空サメね」

「(コクン)」

「うわああっゾロォォォォ!」

サメは標的をチョッパーからゾロに移し、湖に潜ったゾロを追いかけていった。




―――それからしばらく。




「どうなっちゃったんだ、ゾロォ……」

チョッパーが覗き込む湖は静かで、波一つない。

「もしかして食べられちゃったんじゃ……」

「ああああああああああああああああっ!!ゾロが食われたぁぁぁっ!!!」

「食べられたのなら、雲が赤く染まるはず」

「なに冷静に怖いこと言ってんのロビン!」

「だいじょぶ、いきてる」

「あっ、そうか! ティオには分かるんだもんな!」

「(コクン)」


"ザバァッ!"


「ウザってぇ!」



突然湖上に飛び出してきたゾロは、サメを殴り飛ばして、祭壇に上がってきた。

「はぁ、参ったな。泳いで行きゃどうにかなるってもんでもなさそうだ」

顔色一つ変えていないゾロに、ナミは冷めた目を向け、チョッパーは目を輝かせる。

「アンタ、サメ殴り飛ばしたわね? 剣士のくせに」

「ゾロは強いなぁ〜」

「剣士の誇りとかいうやつはどうしたのかしら」

「うるせぇないちいち!」

ゾロはびしょ濡れのシャツを脱ぐ。

「ったく、あんなサメがウヨウヨいちゃ、岸へも上がれねぇぜ」

ロビンが顎に手を当て首をかしげた。

「かといって、このままじっとしているわけにもいかないわね」

「えらいとこに連れてきてくれたもんだ、あの巨大エビ」

「ここで飢えさせることが天の裁きなのかしら」

ゾロは脱いだシャツを絞りはじめた。

ナミが新しいシャツを投げて寄越す。

「飢え死にを待つ、ねぇ。そんな地味なことするもんなのか? 神ってのは」

「さぁ。会ったことないもの。ティオも今の空島のことはよく分からないそうだし」

「ふ〜ん。……ん? 酷ぇなこりゃ」

ゾロはメリーの船底を見て、顔をしかめた。

 
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