シザンサス

□3,ノックアップストリーム
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しばらくして、メリー号は、目的地であるモンブラン・クリケットの家にたどり着いた。

「「すっっっげええぇぇぇぇ!!」」

目の前の光景にルフィとウソップが叫ぶ。

「あれがそいつの家なのか!? 宮殿じゃねぇか!」

「すんげぇ金持ちなんじゃねぇのか!? そのモンブラン・クリケットとかいう奴!」

馬鹿騒ぎする2人に、他はみんな冷めた目を向けていた。

「バーカ、よく見ろよ」

「夢見る男ねぇ……少なくとも見栄っ張りではあるようだ」

「じょうず」

「そうかぁ?」

「(コクン)」

岸が近づくと、ルフィが真っ先に降りていった。

回り込んで家を側面から見た途端、驚愕の表情を見せる。

「げっ、ただの板ぁ!?」

「「なにぃぃぃぃっ!?」」


ウソップとチョッパーだけが驚く。

よく見れば、2階建ての家が半分だけ建ててあり、海に面した方にベニヤ板で宮殿が描いてあった。

ナミがロビンの方を向く。

「一体どんな夢を語って街を追われたの?」

「詳しくは分からないけど、このジャヤという島には、莫大な黄金が眠っていると言っているらしいわ」

「黄金!? どっかの海賊の埋蔵金とか!?」

「さぁ、どうかしら」

黄金と聞いて黙っていないのが、ナミ。

「掘るのよチョッパー! 金が出るわ!」

「え、掘ったら出るのか?」

半信半疑だが、怒ったら怖いナミの命令には逆らえず、角で掘り始めた。

「こんな辺境に1人暮らしか……」

サンジは辺りを見回しながら歩く。

ルフィは、さも当然と言いたげに、家の扉を開けた。

「こんにちはー。お邪魔しまーす」

「ってオメェはいきなりかよ!」

ウソップが止めるのも聞かず、ルフィはずかずかと家の中へ入っていく。

「……」

みんなが思い思いに周辺を見て回る中、ティオはじっと、家を横から見つめていた。

「どうした?」

碇を降ろしてやっと降りてきたゾロが、隣へ並ぶ。

「……へん」

「あ? 何が」

「わからない……でも、いわかん、ある」

「ぁあ? 違和感あるっつーより、違和感しかねぇだろ、この家」

「……」

ティオはしばらく不思議そうな表情をしていたが、コロっと気分でも変わったのか、家に向かってすたすた歩き始めた。

「……よく分かんねぇ奴だな」

ゾロは頭を掻き、ため息混じりに寝る場所を探し始めた。



その頃、いち早く家に入ったルフィは、もちろん家の中を好き放題に歩き回っていた。

「誰もいねぇな……こんにちはー! ……返事がねえ」

「馬鹿! ヤバい奴だったらどうすんだよ!」

ウソップの必死の呼び止めを、聞くルフィではない。

家の外ではナミが何かを発見していた。

「……これは」

木の切り株で作られたテーブルと椅子。

その上に1冊の本が置かれている。

「絵本? ずいぶん年季の入った本ね……ふふふっ、"嘘つきノーランド"だって!」

「嘘つきノーランド?」

「知ってるの? サンジ君。でもこれ、北の海(ノースブルー)の発行って書いてあるわよ?」

「あぁ、俺、生まれは北の海(ノースブルー)だから。みんなには言ったことなかったか?」

そこにウソップがやってくる。

「初耳だなぁ。お前も(イースト)だと思ってたよ」

「育ちはな」


"ボスッ、ボスッ"


「うるさいチョッパー! 何やってんの!」

「ええええっ!?」

ナミが掘れって言ったくせに、なんて、怖くて言えるわけがないチョッパーであった。

「"嘘つきノーランド"は、(ノース)じゃ有名な話なんだ。童話とは言っても、このノーランドって奴は、昔実在したって話を聞いたことがある」

そう言ってサンジがタバコの煙を吹くと、付け加えるようにティオが言う。

「もんぶらん・のーらんど。いまから、およそ、400ねんまえ、しょけいされた、おとこ。しょけいきろく、のこってる」

ウソップが目を見開いた。

「マジかよ!」

「(コクン)」

「つーか、何でも知ってすぎだろお前……何モンだよ……」

ナミは『うそつきノーランド』を読んだ。



―――むかしむかしの物語。それは今から400年も昔のお話。

北の海のある国に、モンブラン・ノーランドという男がいました。

探検家のノーランドの話は、いつも嘘のような大冒険のお話。

だけど村の人たちには、それが本当か嘘かもわかりませんでした。

あるときノーランドは旅から帰って、王様に報告をしました。

私は偉大なる海のある島で、山のような黄金を見ました。

勇気ある王様はそれを確かめるため、2000人の兵を連れて、偉大なる海へと船を出しました。

大きな嵐や怪獣たちとの戦いを乗り越えて、その島にやっとたどり着いたのは、王様とノーランド、そしてたった100人の兵士たち。

しかしそこで王様たちが見たのは、何もないジャングル。

ノーランドは嘘つきの罪で、ついに死刑になりました。

ノーランドの最後の言葉はこうです。

「そうだ! 山のような黄金は海に沈んだんだ!」

王様たちは呆れてしまいました。

もう誰もノーランドのことを信じたりはしません。

ノーランドは死ぬ時まで、嘘をつくことをやめなかったのです―――。



「哀れ嘘つきは死んでしまいました。勇敢なる海の戦士になれもせずに……」

ナミは最後にそう付け足しながら、ウソップの方を見る。

「俺を見んな! 切ない文章を勝手に足すな!「うわああああああっ!!」


「「「!?」」」


いきなり、どこからか叫び声が聞こえた。


 
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