孤高の歌姫

□修行の日々〜シンドリア編〜
2ページ/12ページ

アリババ君、君にお願いしたいと思う」




(は…?)





アリババは自分の耳を疑った。


教えるだって?人に?金属器の使い方
を?この俺が?



アリババは前のめりになり一歩踏み出し、早口で
「ちょっ…!!!ちょっと待ってください!!!シンドバッドさん!!!俺には無理ですよ!!!
俺…まだ完全に金属器使いこなせていませんよ!!!それに…」

「いいんだよ、アリババ君。

何も俺は彼女に完全なる金属器の使い方を君に教えさせようなんてはなから思ってないよ」

「…?」
アリババは良く分からないといった感じで首を傾げた。

「君には金属器の能力の発動の仕方、あわよくば武器化魔装までの過程を教えて欲しいと思っている。
今この国にいる金属器使いは俺と…君だけだからな」

シンドバッドは右手の腕輪に手をかける。
そこに刻まれ輝く8芒星。

その他にも彼の持つ指輪や首飾り、腰に下げた剣にも同じように刻まれてる。
このことから彼が迷宮攻略者であることは見まごうことのない事実である事が窺えた。

それはアリババにも言えること。
シンドバッドから譲り受けた"バルバッドの宝剣"にも同じように刻まれてるのだ。


しかしアリババはぎゅっ…と拳を握り締め、
「…それなら俺よりもシンドバッドさんの方がいいんじゃないですか?
俺なんかよりも金属器を使いこなせているんですから…」
と、少し俯きながらボソボソと呟いた。
"情けない…"と思いながら。
もしも…もしもあの時もっと自分に力があれば…
アリババは人知れず僅かに唇を噛んだ。


シンドバッドはその様子をみてあぁ…といった表情を浮かべた。
そうしたいのはやまやまなんだが…と言葉を零しながらソフィアの方を見た。
バチッと目が合ったかと思うとすっと逸らす。
本人は自然にやってるつもりだろうが傍から見たらあからさまな避けようだ。

ほらな、といった表情でアリババを見る。
「この通りだ。
見ての通り俺は彼女に"何故か"嫌われてしまっているようでね、滅多に会話もしてくれないんだ。
このまま俺が指導してもいいんだが嫌がる女性を無理やりっ…ていうのも如何せん事かと思ってね…。

ならばいっそのことアリババ君に任せたらいいんじゃないかと思ってね。
多分2人とも同じ位の年齢だろうから気が合うかと思って。」
「…でも」


俺にはやっぱり無理です。


と断ろうとした時シンドバッドが先に口を開いた。


「アリババ君…君は自分を軽く見すぎている。
もっと自信を持つべきだ。

俺は君ならきっと成し遂げてくれると信じてるよ」

シンドバッドとアリババの視線が交錯する。
ほんの数秒、しかし体感的には遥かにたった沈黙の時間の後にアリババは答えを見出した。


「…分かりました。やってみます」




その答えにシンドバッドは満足そうに頷いた。
その笑顔は了承してもらえて良かった、という微笑よりも予想通りになった、という見透かされた微笑に見えた。




「でも…俺今はたまたま修行無いですけど普通なら殆ど一日中になりますけど…」
「それなら問題ないよ。
あいた時間に軽く見てやるくらいでいい。本当にゆっくりでいいんだからね。
修行の内容は君に任せるよ。



さぁソフィア。今から彼が君の師匠だ。
君の記憶を取り戻すためにも頑張ってくれ」
『…はい』
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ