孤高の歌姫

□記憶の欠片〜シンドリア編〜
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浅はかな考えでした…

そんなのはほんの一時だけのものにしか過ぎないと…。
…深く考えもせずにやってしまった。
でもそうせざるを得なかったんでしょうね。

今でもそうした事が最善のことだったと思う事でなんとか平静を装っています。」

アリシアが語り終わると辺りは静寂に包まれた。


遠く離れた海岸から波の渦巻く音や市街地の雑踏の音が小さく響くばかり。



誰も…誰も声を発さない。






否、発せなかったと言うべきか…













アリシアの肩は小刻みに震えており、ソフィアはそっとて…その肩に手を置いた。
「…ッツ…。本当にごめんなさい…ごめんなさい…」
『そんなに自分を責めないでくださ
い。貴方は何も悪くないじゃないですか。
…話の内容自体には驚きましたがでもそれは貴方が私の事を思ってしてくださった事なんですよね?
ありがとうございました…』
「…ッツ…」

ソフィアは穏やかな表情をしていた。
爽やかなすっきりとした表情を。

本来ならば自分の記憶を消された、という事に驚いたり怒りを顕にするべきだったかもしれない。

けど彼女は違ったのだ。
逆に嬉しかった。

目を覚ましたとき何も覚えていなく流されるがままにこの国へと来て今日まで生活してきた。

そのことは幸いというべきものだったのだろうが彼女にとっては苦痛だったのだ。
生きる意味さえわからずただ息をしている。
あとは意味がない。価値がない。


そう…思っていたのだ。
それがどうだろう。
今日になって自分は記憶を消されたという。
意味があって、自分の為を思っての行為。

嬉しかったのだ。自分が他人にそこまで思ってもらえるほどの人だったのだと分かったから_

それが彼女の表情に表れたのだ。
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