孤高の歌姫

□修行の日々〜シンドリア編〜
1ページ/12ページ

日付は変わり次の日。
この日も昨日と同じようにさっぱりとした爽やかな天気で真っ青な空。
風に吹かれ流されていく真っ白な雲。
この二つが美しいコントラストを生み出していた。

シンドバッドは窓を開ける。
外の様子を確認するとそよそよと吹く潮風を気持ちよさそうに浴びた。
深い紫色の御髪もサラサラと微かに揺れた。
潮の香りとともに港の方で売られている珍しい果物のよく熟れた甘酸っぱい匂いも微かに感じ取れた。


場所は昨日の応接間とはうって変わってごく限られた人しか入ることのできない『紫獅塔』にあるとある1室。

シンドバッドは開け放った窓から振り返るとそこにある隣あった二つの影に話しかけた。


「昨日といい今日といい、急に呼び出して悪かったね。

アリババ君、それに


ソフィア」


ひとつの影の方…アリババは屈託の無い笑顔で答えた。
「いいえ、全然問題ないですよ。
今日は師匠が午前中は軍事強化で午後まで俺の修行には付き合えないって言ってましたし…
アラジンにモルジアナも各々で修行があるからはっきり言って暇だったんで…」
『…私も特にやることは無いので…』
もう一つの小柄な影の方のソフィアもおずおずと答えた。

シンドバッドは二人の様子を見ると傍にあった天鵞絨張りの豪奢な椅子に腰掛けた。
腕を組み、如何にも威厳があるような様子で言った。
「…そうか。
実は二人に来てもらったのはお願いを兼ねた提案があるからなんだ。」
「お願い…ですか?」
アリババが小首を傾げて訊ねる。ソフィアの方も窺う様な表情でシンドバッドを見る。
「そうだ。

ソフィア。君は金属器を扱うことが出来るかい?」

その問にソフィアは首を横に振って否
定の意を伝える。

「だろうな…。つい昨日まで金属器の存在すら知らなかったんだからな…。


そこでだソフィア。
君にはその金属器をちゃんと扱えるようにしてもらう。
せっかく宿った力だ。君の記憶を取り戻すきっかけにもなるもしれない。





そこでだ、

その"金属器"をうまく扱う為の修行を__













アリババ君、君にお願いしたいと思う」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ