saiyuki novel

□Chateau HAUT BRION(35)
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カチ

カチ

カチ


規則的な時計音だけが響く部屋の中で、三蔵は舌打ちをした。
『カミサマ』を倒した後、八戒は悟浄と悟空を相部屋にする事をやめた。
他人に異常な感情移入をしてしまう悟浄は何時何処でこの旅を抜けるか分からない。
ふわふわと掴みどころのない男の勝手な行動で旅をストップさせるのは御免だ。

普段は八戒が目を光らせているようだが、今回の長旅での疲労を回復させるため
“悟浄の見張り役”という面倒事を三蔵に押し付けたのだ。


中々寝付けない身体を起こし、近くにあるマルボロを手に取る。
ふと壁に掛けてある時計に目をやると、丁度、日が変わる頃だった。


その時、フとドアの前に人の気配がした。
三蔵はすかさず手元の愛銃を手に寄せ、ドアに向けて焦点を合わせる。


「誰だ」


あの馬鹿河童が帰ってくるのはどうせ日が昇る頃。
牛魔王の刺客とも考えられるドア越しの気配に殺気を送る。
するとゆっくりドアが開いて、見慣れた紅が視界に入った。


「…わり、起こした?」


反省の色を見せないようなへらりとした笑みを浮かべながら、
部屋に入ってきたのは悟浄だった。


「貴様にしては珍しく早帰りだな」


「ッえ、あ…眠くなってきちゃったの、俺様」


いつもより反応が遅い軽口に少し疑問を抱きつつ、
自分の寝床へ歩む悟浄の足取りは、いつもよりおぼろげだ。
両手で自分の身体を抱き、まるで何かを我慢するかのように。


「…目障りだ。早く寝ろ」


三蔵は眉間に皺を寄せ、冷たく言い放ち銃の焦点を悟浄に合わせた。
身の危険を察知した悟浄は素早くベッドに向かおうとしたが、その時――…


「ッぅあ……ッ」


悟浄の口から、艶めかしい声が漏れ、その場に崩れ落ちた。
咄嗟に動いたため、服の擦れで意識していない快感が悟浄を襲う。
目を見開き咄嗟に口を手で覆う悟浄の姿に、更に眉間に皺を寄せ近づく。


「…わりぃって…寝てろよ…」


弱弱しく動きを制する言葉を放つ悟浄を無視し、三蔵はベッドから起き上がり悟浄に近づく。
月明かりに照らされた悟浄の表情の額には汗が流れ、真紅の髪がへばりついている。

三蔵はその場にしゃがみ込んだ。


「おい、顔を上げろ」

「やだね」

「上げろと言っている」

「だからわりぃって、飲みすぎたの」


言葉で言っても無理だと判断した三蔵は、悟浄の顎を掴むと無理矢理上を向かせた。
真紅の瞳は潤みを帯びて、上気したように紅くなった頬、何時もより紅い唇…。

その表情に、三蔵は思わず息を飲んだ。


「…離せって……さんぞーさま」


潤んだ瞳を逸らし力無く拒絶する悟浄の表情は何時もとは違い艶めかしい。
顎を掴んだ腕に、悟浄の熱が籠った荒い息がかかる。



“理性”の糸が、プツンと切れた音がした。



悟浄の腕を掴み立ち上がらせ、無理矢理ベッドへ投げ飛ばす。


「んあぁ…ッ」


その衝撃で我慢していた声を漏らしてしまった悟浄は尚も口を腕で隠す。
恥ずかしさと情けなさに耐えきれなくなり布団で顔を隠そうとするが、
三蔵が覆いかぶさり両腕を掴んだことにより悟浄の真っ赤な顔が月明かりで照らされる。


勘弁してくれよ鬼畜坊主!


口を開くと情けない声を聞かれてしまうのを恐れ、心の中で悪態を吐くが、
そんな心の叫びが三蔵に通じる筈もなく、自身を落ち着かせるため溜息を吐いて
覆いかぶさったまま動かない三蔵に「重ぇからどけよ」と施すが、無反応。


「あ、えーっと…ね、眠ぃから寝かしてくんねぇ…?」


三蔵の様子を伺うように視線を合わせると、それが合図かのように三蔵の顔がゆっくり近づく。
現状が把握できない悟浄は戸惑いながらも近づいてくる三蔵に恐怖を感じ、目を瞑った。

同時に、唇に温かな感触。


「…え………?」


口を開けると同時に舌を侵入され、乱暴にかき乱される。
時折漏れる声が三蔵の熱を上げ、引き寄せられるように何度も角度を変えて味わう。
段々酸素が薄くなり、抵抗する力が抜けるのを確認してから、唇を離した。


「何があったのか説明しろ」


耳元で囁くとビクンッと反応をみせる敏感な身体に少し気分が良くなる。
だが、酸素を取り戻した悟浄はまたもや無駄な抵抗を見せる。


「なンもねってば」


あくまで飲みに行って、酔いが回って眠たくなってきたから帰宅した。
という何処かの馬鹿猿でも気付くであろう嘘を突き通すつもりのようである。


「なら、身体に聞くまでだ」


三蔵は軽く舌打ちすると、もう一度悟浄の口内をかき乱そうと唇を近づけようとした。
だが、潤んだ瞳を隠すように口角を上げ、挑戦的な表情を浮かべる悟浄に動きを止めた。


「話す気になったか」

「いや、アンタさあ…」


こんな状況であるというのにククッと笑みを零す悟浄に自然と眉間の皺が増える。
苛立ちを隠せない三蔵の表情を横目で捉えながら、ゆっくりと口を開けた。


「…俺のこと、抱きてぇの?」


蔑むような視線を向け、不自然な程酷く冷静な声で吐き捨てた。
言葉で言い表すことのできないどろどろとした感情が三蔵の中で蠢く。
目の前にいる男の全てを壊し、滅茶苦茶にしてやりたいどす黒い欲望に支配される。

そういった感情をぶつける男を幾度となく目の当りにしてきた悟浄は、
慣れたように三蔵の首に腕を絡ませ耳元で囁いた。


「いいぜ、来いよ」


―――悟浄の視界に、三蔵は映っていなかった。


――――――――――

やっと三蔵とのシーン少し書けた!
悟浄には犯されそうになっても余裕な態度を取ってほしいです。←

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