saiyuki novel

□始まる前にピリオド
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ガタガタと揺れるジープの乗り心地は最悪。
だけど強い日差しに吹き抜ける風が心地良い。


「腹減ったあ」


ボソリと呟くといつもは返ってくる悪態がない。
隣では真っ赤な炎みたいな髪を揺らした悟浄が
スースーと寝息を立てている。

―――…今日は静かだ。


「悟空、もう少しで着きますからね」

暇だなあという心を汲み取ったように八戒が答えた。
「うん」と小さく頷いてもう一度悟浄に目を向ける。

額に少し汗を滲ませているせいか少量の髪が
悟浄の顏にピタリとくっついていて表情が伺えない。
起こさないようにそっと髪をどけてやる。

いつも貼り付けている仮面のような笑みはなく、
幼い子供のような、可愛らしい寝顔に何故か頬が緩む。


寝顔だけはカワイイんだよなァ、悟浄って。

ツンツンと二本の傷跡をつつくと眉がピクッと動いた。
咄嗟に手を離して前を向くと、助手席のミラーから紫眼に射抜かれた。

怒ってるし…。

心の中で悪態を吐きにへらと笑ってみせると三蔵は
フンと鼻を鳴らし目を逸らした。
三蔵に見られていない事をいいことに、
バレないよう小さく溜息を一つ。

(いっつも悟浄独り占めしてンだから、たまには触らせてくれたって良くねえ?)


fin

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