saiyuki novel

□ちび悟浄苦悩の一週間
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「ンだとチビ猿!」
「チビって言うなゴキブリ河童!悟浄だって昔はチビだっただろ!」
「わりぃけど、俺は昔から長身足長の美男子だったぜ?」
「証拠見せろよ!」
「ンなの…」



「見せてやろうか?」


2人のいつものやりとりを止めた人物は、三蔵のハリセンでも、八戒の黒い笑顔でもなく女性の声だった。悟浄でも悟空でも、ましてや八戒のものでもない声の方角に視線が集中する。気配を感じさせず、ずっとそこに居たかのように菩薩が立っていた。


「よぉ、久しぶりだな」

4人の警戒する視線を浴びながら、菩薩は満足そうに軽い挨拶をした。


「なんの用だ」


銃を構え焦点を菩薩に合わせながら三蔵が問う。
相変わらずだなお前はと思いながら菩薩はやれやれと首を振った。


「お前のペットの要望を叶えようと思ってな…おい、悟空」
「えっ?俺?」


突然の名指しに悟空はビクリと肩を震わせ、人差し指を自分へ向けた。


「ああ、この紅い髪のガキの頃が見てえんだろ」
「なななに言ってやがんだっ」

菩薩はニヤリと怪しげな笑みを浮かべると、悟浄に近づく。一度不意打ちで女ではなく、男女に唇を奪われて(採血)された経験がある悟浄はひくひくと口元を震わせながら苦笑を浮かべ、近寄る菩薩から一歩一歩と後退る。


「どーなんだ?」


悟浄を壁に追いやると菩薩はもう一度悟空に問う。
いつも「チビ」だと罵ってくる悟浄が本当に子供の頃から長身だったのか興味がある。本当に「チビ」だったら…その時は精一杯「チビ河童」と罵ってやりたい。


「…見てみたい、かも」

悟空は金の瞳をキラキラと輝かせながら言った。


「決まりだな」
「勝手に決めンなオカマ野郎っ」


菩薩は速い動きで騒ぐ悟浄の顎を掴んだ。逃げようと抵抗する悟浄を無視してもう片方の手を目の前に翳すと、部屋中が光に満ち溢れた。眩しさに思わず全員が目を閉じると、「効果は一週間だからな」と、楽しそうに呟く菩薩の声が聞こえた。












「うっ…ぎゃああああああ―――ッ」


光が消えたと同時に、声変わりをしていない青年の叫び声が聞こえた。慌てて目を開けるとそこに居たのは15、6歳くらいの紅い髪をした青年だった。



「…悟浄……?」


ノースリーブのシャツはぶかぶかで肩から滑り落ち、ズボンはサイズが合わないようで、ずり落ちそうになるのを片手で抑えていた。紅い瞳は宝石のように大きく、普段よりも幾分か幼くみえる。


「うわあ…可愛くなってやんの、悟浄」
「てめえのせいだぞ馬鹿猿!」


自分の姿に戸惑っていた悟浄は、自然に口から零した悟空の「感想」に腹を立て、飛び掛かった。いつもならゴロンと転がる悟空であったが、今の悟浄は悟空の身長より少し低い。簡単に悟浄を受け止めたが、蹴りが来る前に慌てて悟浄を押し倒した。


「力も弱くなってんじゃん、チビ河童」
「ンだとこらぁ!」
「ちーび河童、ひ弱河童♪」
「ぜってー殺す!」


下で暴れる悟浄を抑えながら満足そうに煽る。いつまでも抵抗を止めない悟浄のノースリーブはいつのまにかはだけて、白い肌を露わにしていた。筋肉質ではあるが、全体的に小さくなったことによって細いラインが協調されている。

――やべ、なんか色っぽい…。


刹那、スパアーンと切れの良いハリセンの音が響いた。


「いってぇーっ」
「何で俺まで殴られんだよ!」


悟浄は頭を摩りながら三蔵に抗議した。涙目になりながら宝石のような瞳で睨む悟浄の姿はほぼ裸に近い。ノースリーブは脱げ落ち、ズボンは膝小僧までズリ下がっている。パンツもサイズが合っていないようで、脱げかかっている。


「いいから早く服を着ろ!…ったく、そんな姿見せるのは俺の前だけにするんだな」


フンと鼻を鳴らし、愛用のマルボロを咥えながら三蔵は椅子に腰かけた。
悟浄は、自分の姿を確認したあと静かに服を整えていた。…顔を髪と瞳に負けないほど真っ赤にして。
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