saiyuki novel

□ひとつの嘘とひとつの本当を唇に重ねた(B→5)
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いつも通る路地裏で僅かに血の匂いがした。
興味本位で匂いの元に足を向ける。

そこで目にしたものは

華のように風に靡く真紅の髪と
凍てつくような鋭い、髪と同じ色を持つ瞳だった。




「いくら出したら俺と組む?」


ソレを自分のモノにしたいという欲求が頭を巡り、
自然に身についた軽口がぽろぽろと口から零れていった。







―――







悟浄は、自分を大事にしない。
何時何処で息絶えようが後悔しなさそうな男だ。
そのクセお人好しだから、都合が良い(タチが悪い)。
どれだけお人好しかと言うと危険な状況で裏切ったとしても、
余熱が冷めた頃姿と表すと悪態を吐きながらも意地悪い笑みを
浮かべながら受け入れる――それくらいお人好しだ。


「なァ悟浄」


席を立ち、悟浄の肩へ手を置く。
知り合って間もない頃は触れるだけでも不機嫌になるほど
扱い辛い捨て猫のようだったのに、今ではされるがままだ。


「ンだよ」


俺が教えた酒の味を嗜みながら軽く返事を返す悟浄の指には、
はたまた俺が教えた煙草が挟まれている。
日に日に“コチラ側”に染まっていく悟浄を見るのが楽しかった。
今度は悟浄が頑なに厭がるオンナの良さを教えてやろうと決めている。

でもその前に―――


「『眠れない夜の凌ぎ方』教えてやろぉか?」





―――





「慣れてンだな」
「…それ、褒めてんの?」


驚いたことに悟浄は、『眠れない夜の凌ぎ方』は知っていた。
華奢で感度の良い身体とその派手な紅は、正直な返答を述べると
その辺でゴロついている男娼よりも、股の緩い尻軽女よりも数倍好かった。


「男のしゃぶって稼いでたのかよ」


ニヤリと口角を上げて軽口を叩く。
すると悟浄は眉間に皺を寄せて目を逸らした。

少し間を置いて、小さな声で呟く。


「………コレが一番楽」

人を受け付けない捨て猫が男が真面目に働くとは思えない。
きっと自分のように窃盗を繰り返して生きてきたのだろうと思っていたが、
そんな面倒な事を、悟浄がする訳がないと気付いた。


「もっと楽でおもしれぇ稼ぎ方があるぜ?」


きっとお前には向いてる、と付け加えると、
興味を示した真紅の瞳がこちらに向けられた。


「勝てばいい、な?楽だろ」


そう言って唇をなぞる。
柔らかい感触と事後で濡れそぼったソレにゴクリと喉が鳴った。
コッチ側に染まって欲しいからオンナは教えるつもりだ。
だが、こういう姿を見る男は自分だけでいいのではないのか。


「…じゃ、教えろよ」


金、美味い酒、極上のオンナ…そんなことよりも
『堕落した生き方』以外に執着することがなかった。


「交渉成立。」

沸々と湧き上がる自分の中の独占欲を抑え込むように
もう一度、紅を抱いた。


fin
――――――――――――
初めての短編で初めての鷭→浄です。え
こういうイイ加減な男に振り回されて
ウザイと思いながらも嫌いになれない悟浄に萌え。え


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